ご実家が空き家になった場合、現在のお住まいと離れていると、お手入れのために頻繁に通うことは困難です。日々忙しいと、対策を考えるのは先延ばしになりがち…。思い出が詰まった家となると、手放しにくいものですが、「空き家」は放置しておいてもあまりいいことはありません。
この記事では、「空き家」に関するデメリットと対策について、アクティブシニアのライフサポートを行う株式会社ユメコム代表の橋本珠美が、解説いたします。 空き家を抱えている方の悩みを解決するヒントとなればと思います。
目次
「空き家」問題の3大デメリット
「特定空家」と判断されたら固定資産税が最大6倍!
「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」
空き家活用術
まとめ
「空き家」問題の3大デメリット
実家などの「空き家」は、3年以内にどう処理するのかを決断しましょう。放置していても、いいことはありません。
景観・治安の悪化
無人となった空き家は、花木が伸び、雑草が生い茂り、落ち葉がたまります。まさに朽ちた家の景観になるのに、時間はかかりません。また、ごみや廃棄物を不法投棄されることも少なくなく、ごみ屋敷化してしまう例も見受けられます。
地域の防災や防犯機能が低下するため、空き巣被害や不審者の侵入など、犯罪が発生しやすくなり、近隣に対して迷惑や損害を与えてしまうことに…。
資産価値の低下
建物は、人が住まなくなるとどんどん劣化・老朽化していきます。「一年ぶりに空き家となった実家に帰ってみると、雨どいが割れて、その下には大きな水たまりができていた。さらにその部分の外壁が湿気を帯びていた。メンテナンスしてほしい」というご相談も、実際にありました。
家屋内では、水回りの臭いやカビなど衛生上の問題が起こると、売却する際に価格が下がることは必至です。
税金問題
空き家も不動産ですから、「固定資産税」がかかります。住宅用不動産の場合、「住宅用地特例」という税金軽減の措置が設けられており、建物がない土地に比べて、住宅用家屋が建っている土地は、最大6分の1に軽減されるというものです。
それが、2015年「空家等対策の推進に関する特別措置法」の施行に伴い、適用されない場合が出てきました。税金として目に見える形で負担が課せられるのは、大きなデメリットです。
「特定空家」と判断されたら固定資産税が最大6倍!
「空家等対策の推進に関する特別措置法」により、下記の4つのように放置が不適切である状態に該当する「特定空家」に認定されると、固定資産税が最大6倍に跳ね上がります。そして、市町村が撤去を命じることも可能になるのです。
1:倒壊の恐れや老朽化により保安上の危険があるもの
2:ごみの不法投棄や消化槽の放置による衛生面で有害なもの
3:外見上の傷みや立木の繁茂など周囲の景観を損なっているもの
4:その周辺の生活環境の保護を図るために放置することが不適切な状態にあるもの
「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」
「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」では、相続の開始があった日から3年目を経過する日の属する年の12月31日までに相続の開始直前において被相続人の居住用に供されていた不動産を売った場合には、売却益のうち3,000万円までは控除になるという特例です。
その他相続した家屋の要件
「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」に該当する要件3つについて、下記にご紹介します。
1:相続の開始直前において当該被相続人以外に居住をしていた人がいなかったこと
2:昭和56年5月31日以前に建築された家屋であること
3:区分所有者建物登記がされている建物でないこと
※1適用期間:平成28年4月1日〜令和5年12月31日
※2売却代金が1億円以下の被相続人の居住用財産に限られる
※3特例を受けるためには、家屋は一定の耐震基準を満たすものであること。また、家屋全部を取り壊した後にその敷地を得る場合も当てはまる等。
空き家活用術
空き家活用のために受けられるサービスがあるのをご存知ですか? 自治体ごとに補助金があるのです。この記事では、京都市を例にしてご紹介します。
「空き家活用・交流支援等補助金」
空き家を活用するための改修工事等に補助金が出ます。
・活用・流通促進タイプ
一年以上、居住者又は利用者がおらず、かつ市場に流通していない空き家を、賃貸用または売却用として流通させる場合に使えるタイプ。
補助対象となる改修工事にかかる費用の3分の2
→補助金最大60万円(京町家は90万円)
・「地域連携型空き家対策促進事業」
地域の自治組織が主体となって行う、空き家の発生予防や活用等に関する取り組みに対して、市が支援します。
→補助金額 1団体につき年間最大50万円
・「空き家活用・流通支援専門家派遣制度」(無料)
賃貸・売却用として流通していない戸建・長屋建ての空き家を、活用・流通させようとする場合に、必要な助言や情報提供等を行う専門家(建築士及び地域の空き家相談員)を無料で派遣します。
・「地域の空き家相談員」(無料)
身近なまちの不動産屋さんが、賃貸や売買、活用方法等の相談に応えてくれます。
住居として活用する場合に限り、「すまいの耐震化に関する補助制度等」、「既存住宅の省エネリフォームに関する補助制度」というような制度も使えます。
まとめ
空き家は放っておくと様々なトラブルを招きます。そうなっては思い出のつまった大切な家が台無しです。ご家族とよく話し合い方向性が決まったら、早めに専門家に相談して対策を考えましょう。
構成・編集/末原美裕(京都メディアライン・http://kyotomedialine.com)
●取材協力/橋本 珠美(はしもと たまみ)
2001年4月、株式会社ユメコムを起ち上げ、介護・福祉の法人マーケットを中心に、誰もが高齢社会を安心して過ごすためのコンサルティングを始める。
また「高齢者と高齢者を抱える現役世代」のための相談窓口「シニアサポートデスク」「ワーク&ケアヘルプライン」を運営し、高齢者やそのご家族の幅広いお悩み(介護・相続・すまいなど)にお応えしている。
相談窓口の事例と自身の経験(ダブルケア)を取り入れたセミナー活動は好評を得ている。
株式会社ユメコム(https://www.yumecom.com)