私たちは「甘いものを食べたい」と強く感じることがあるが、いったい「甘いもの」は体にどんな影響を与えているのだろうか。
予防医療の専門家である内科医の久保明さんは、糖分にはプラスの働きがある、という。
糖質がもたらす「4つの効果」
「食べ物から摂取された糖質は、消化吸収を通してブドウ糖に分解されますが、このブドウ糖の役目が大きいのです。例えば私たちの脳は、エネルギーのほとんどをブドウ糖に負っています。脳の重量は、体重の約2%に過ぎませんが、1日に必要なエネルギー量の約20%を脳が消費しているのです。最低でも1日100gのブドウ糖が必要です」
つまり甘いものは、記憶力などの脳の働きに大きな影響を与えているということだ。
「ブドウ糖は、精神を安定させる脳内の神経物質セロトニンを分泌しやすくする働きがあります。セロトニンの効果によって、幸せ感が上がったり、リラックスできたり、という効果があると考えられています」
糖質制限で死亡リスクも上昇
世間では糖質制限が盛んだが、その元凶はご飯やパンなどの主食に含まれる糖質であり、甘いものが悪者というわけではない。
「糖質とは、食物繊維を除いた炭水化物のことです。厚生労働省が発表している『日本人の食事摂取基準』2020年)によれば、総摂取エネルギーにおける三大エネルギーの割合は、炭水化物から50~65%、タンパク質から13~20%、脂質から20~30%が良いとされています。近年アメリカで、炭水化物からのエネルギー摂取比率と死亡率の関係を追跡した調査(2018年)があるのですが、炭水化物からのエネルギー摂取比率が50~55%で最も死亡率が低く、40%未満および70%以上だと、死亡リスクが高まるという結果が出たのです(上図グラフ参照)。摂り過ぎもいけませんが、摂らなすぎても弊害があるのです」
何事も、過ぎたるは及ばざるがごとし、であるということだ。
「何より日常の症状と定期的な検査を両輪にして、ご自身の体を把握することが何よりです」
解説:久保 明さん(銀座医院 院長補佐、東海大学医学部客員教授・65歳)昭和29年生まれ。慶應義塾大学医学部卒業。一貫して予防医療とアンチエイジング医学に取り組む。著書に『カリスマ内科医と組み立てるDIY健康大全』など多数。
※この記事は『サライ』本誌2021年2月号より転載しました。年齢・肩書き等は掲載当時のものです。(取材・文/角山祥道 図版/稲岡聡平デザイン室 )