約30年前から数が半端なうつわなどをこの倉庫で保管。
トロ箱が4~6段ほど積み重なりぎっしりとうつわが入っている(5000円コース)。

日本で初めて磁器が焼かれた地として、約400年の歴史を誇る佐賀県有田焼。伝統的なこの産地で、新しいうつわの買い方を提供すると話題を呼ぶのが幸楽窯の「トレジャーハンティング」である。

古い小学校の校舎を移築し、倉庫として使う建物内には、うつわが入ったトロ箱(海産物を入れて輸送する際に使う魚箱。有田焼ではうつわの保管に伝統的にこの箱を利用してきた。)が何段にも積まれて壮観だ。ひと籠5000円と1万円の2コースがあり、指定の籠一杯に好みのうつわを入れていく。5000円コースは真っ白な磁器、または下絵の青絵のみが施されたものが中心。1万円コースは有田焼らしい絵付けのうつわもふんだんに選べる。

5000円と1万円ではうつわを選べる場所が異なる(写真は1万円)。
約1万平方メートルの大きな倉庫が、「うつわのお宝探し」の舞台となる。

幸楽窯の歴史は慶応元年(1865)にまで遡る。普段使いのものから割烹に納めるうつわまで、多種の陶磁器を販売してきた。代表取締役社長の徳永隆信さんはこう話す。

「うつわの注文が入ると、失敗する可能性もあるので少し多めに作ります。それで半端になったものを祖父の代から倉庫に置いてきたのです。絵付けをまだしていない真っ白なうつわや下絵だけの制作途中のものが販売できると私たちは思っていませんでした。でもある時、外国人の芸術コーディネーターに、充分魅力的なのになぜ売らないのかと尋ねられたのです。それで倉庫を開放して、籠一杯に買っていただくことにしました」

徳永隆信さん(53歳)
京都市立芸術大学工芸学部卒業。東洋ガラス入社、マーケティングデザインを学ぶ。平成22年、幸楽窯5代目として跡を継ぐ。

娯楽性もある充足の買い物

籠のなかに気に入ったうつわを入れていく。九州地方の観光客の他、東京からも訪れるという。

うつわを選べる制限時間は1時間半。窯元から作業用の軍手を渡されて、ハンティングが始まる。目移りしながら広い会場内を行きつ戻りつし、好みのうつわを見定めては籠に入れていく。

この日、1万円の籠に入ったのは計20点。なかには50点以上も詰める強者もいると聞くから、工夫次第である。自分の目で良質なものを探し出す娯楽性と相まって、充足の一日となった。

この日、籠に入ったのは計20点。湯呑み、深鉢、小皿など日常で活躍しそうなものが多々、入手できたので割安感もある。有田焼らしい絵付けが華やか。

幸楽窯 佐賀県西松浦郡有田町丸尾丙2512
電話:0955・42・4121
営業時間:10時~15時30分(12時~13時を除く)
無休(年末年始を除く)予約が望ましい。マスク着用のこと。
交通:JR佐世保線有田駅からタクシーで約5分

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※この記事は『サライ』本誌2021年1月号より転載しました。年齢・肩書き等は掲載当時のものです。(取材・文/鳥海美奈子 撮影/松隈直樹)

 

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