主菜は前夜に仕込む煮込み料理で、主食はなし。加えて常備菜とゆで卵からなる朝食が、多忙なハーピストの健康の源だ。

石﨑千枝子さんの定番・朝めし自慢】

前列中央から時計回りに、カチャトーラ(鶏肉・トマト・ズッキーニ・ピーマン・パプリカ・トマト缶・タイム)、柚子大根、キャロットラペ(パセリ)、ゆで卵、ヨーグルト(蜂蜜ナッツ)。カチャトーラはイタリアの鶏肉と野菜の煮込み料理。キャロットラペはフランスの家庭料理で、ラペとは細切りのこと。タイムと柚子は、自宅の庭で育てたものだ。蜂蜜ナッツは生徒さんからの到来物で、ヨーグルトに歯ざわりを添えて美味。

起床は午前6時半~7時。家事を済ませた後、朝食は8時頃だ。「夫はもっと早起きで、朝は別メニュー。常備菜の柚子大根やキャロットラペは夫の酒肴にも」と石﨑千枝子さん。

家で昼食を摂る時は、餅の磯辺焼きになることが多い。「昆布切り餅」を焼き、焼き海苔を巻いて食す。焼き海苔は、『豊洲林屋海苔店』製を常備する。
一服する時に欠かせないのが「さきたま棒茶」と和菓子。和菓子は「昆布切り餅」の『かじわ屋』から取り寄せたもので、写真は年末年始の「福梅」。加賀藩前田家の家紋“剣梅鉢”を象っている。

スタジオジブリのアニメーション映画『千と千尋の神隠し』で、ハープの音色に魅せられたという人は少なくあるまい。

「あの映画の主題歌『いつも何度でも』に登場するのは、ライアーという小型ハープです」

と説明するのは、ハーピストの石﨑千枝子さんである。

石﨑さんは小学3年生でハープに出会ったと、次のように語る。

「私が通っていた板橋区立富士見台小学校(東京)では、昭和35年頃から日本ハープ協会の三村勉先生を招いてハープの指導が始まったのです。そして、生徒を中心にジュニア・ハープ・アンサンブルが編成され、私もその一員でした」

東京・板橋区立富士見台小学校の生徒5人からなるハープ・アンサンブル。使っているのはアイリッシュ・ハープという小型のハープで、持ち運びしやすい。このハープで区内の演奏会やテレビなどに出演していた。石﨑さん小学5年生の頃(左からふたり目)。

こうして 石﨑さんの“ハープ人生”の幕が開いた。小学生が使うのはアイリッシュ・ハープという小型のハープで、ハープの早期教育と家庭楽器を目標に、日本で考案されたものだ。これで指使いを習得すれば、一般的なペダルハープに移行するのが容易だという。

中学から高校時代は個人レッスンを受け、卒業後は三村勉さんが主宰する日本ハープ音楽院に学ぶ。この頃からアンサンブルメンバーとして海外公演を行なう他、ソロ演奏でも活躍してきた。

都立高校1年生の時には2か月ぐらいかけて、アメリカとヨーロッパを演奏旅行で回った(後列左からふたり目)。「若いうちに世界を見られたのが、貴重な経験になりました」と石﨑さん。後列男性が9歳から師事した三村勉先生。
ハープと出会って60 年。「出産や子育てで4年ほどのブランクはありますが、ハープをやめようと思ったことは一度もない。ひとり娘も5歳でハープを始めました」と石﨑さん。

炭水化物を控える

ハーピストは多忙だ。自らの練習に加えて、ハープ教室の講師や個人レッスンの指導もある。

「料理は練習の合間の気分転換になるので嫌いではないのですが、朝食に限っていえば、朝、作るのはゆで卵だけです」

畢竟、前夜が勝負だ。主菜となる肉類と野菜の煮込み料理は、前夜に仕上げておく。よく登場するのはカチャトーラやラタトゥイユ、和風なら大根と鶏肉や豚肉の煮物といったところ。主食はない。

「60歳を過ぎた頃から、朝食の炭水化物は控えめに。摂ったとしてもクラッカー2、3枚です」

結婚前に土井勝さんや赤堀千恵美さんの料理学校に通って、基本だけは学んだ。その後の料理の先生は、外食だという。

「食べることが大好きで、外で食べて美味しいと思った料理は試してみる。案外、成功しますよ」

ハープ仲間の家族を招いて、手料理でもてなすのもまた、健康の秘訣だという。

ハープ・アンサンブルの音色が、人々の癒しになれば嬉しい

週1度、自宅で開かれる「ラ・ラミュール」の練習。石﨑さんと弟子4人からなるハープ・アンサンブルで、出張演奏にも。皆、音楽大学を卒業し、プロのハーピストとして活躍している人たちだ。

平成17年、ハープ・アンサンブル「ラ・ラミュール」を結成した。50歳を過ぎて、ハープで社会貢献活動をしたいと思ったからだ。

「公共団体や企業からの依頼で、介護施設や老人ホームなどを訪れています。アンサンブルが醸し出すハーモニーが施設にいる人たちの癒しになれば、これほど嬉しいことはない。今はソロ活動よりも、アンサンブルが中心です」
 
20代で始めた『銀座十字屋』のハープ講師を始め、『池袋コミュニティ・カレッジ』や『よみうりカルチャー川越』のリトルハープ・アンサンブルの講師もある。リトルハープとは、手軽に持ち運べる小型ハープのことである。

「生徒さんは十人十色で、楽譜が読めない人もいます。けれど、その人が何を目標、目的にしているのかを見極めて接しています。決して押し付けないけれど、その目標のために的確なアドバイスをして、ゴールまで伴走できればと願って指導に当たっています」

現在、生徒は5歳から78歳までと幅広く、40~50人を数える。ハープの優雅で美しい音色を広めるのが使命である。

自宅で個人レッスンをする。生徒の貝塚靖子さん(77歳)は、古稀を迎えた頃に何かひとつ楽器をマスターしようと、石﨑さんに師事して6年目。アニメーション映画『千と千尋の神隠し』を観て、ハープに決めたという。

取材・文/出井邦子 撮影/馬場 隆

※この記事は『サライ』本誌2021年1月号より転載しました。

 

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