取材・文/沢木文
仕事、そして男としての引退を意識する“アラウンド還暦”の男性。本連載では、『不倫女子のリアル』(小学館新書)などの著書がある沢木文が、妻も子供もいる彼らの、秘めた恋を紹介する。
今回、お話を伺ったのは嶋田彰輝さん(仮名・59歳)。現在、総合商社で部長職に就いている。実家は世田谷区内にあり、有名な中高一貫校から私立大学に進学したエリートだ。今は嶋田さんの息子2人が父親と同じような人生を歩んでいるという。
1年前は白髪も染めず、“終わった”というオーラに包まれていた
夏の暑さが厳しい中、嶋田さんはダークグレーのスーツを着こなして、待ち合わせの老舗居酒屋にやって来た。「池波正太郎になった気分だね」とはにかむ顔は、ゴルフ焼けをしており、健康的に照り輝いている。
1年前に嶋田さんにお会いした時は、めまいなどの体調不良を訴えており、体もむくんでいた。白髪も染めておらず、全体的に“終わった”というオーラに包まれていた。しかし今はその真逆だ。短期間になぜこんなに若返ったのだろうか。
「1年前に老け込んだのは、孫が生まれて、世話に追われていたから疲れていたかもしれないね。あとは胃に異常が見つかって落ち込んでいたんだ」
嶋田さんが若返った理由を聞くと、仕事が忙しくなったとか、孫と遊んで痩せた、妻とウォーキングをしたなど、様々な理由を述べていたが、それだけではないはずだ。何度か聞くうちに2か月前から関係が続いている女性のことを話し始めた。
「彼女は44歳のバツイチで、13歳の息子がおり、ウチの近所のマンションに住んでいるんだよね。家は元夫から養育費代わりにもらったみたい。かわいい人だよ」
【55歳のとき「おれは男としてこのまま終わるんだ」と思った。次ページに続きます】