取材・文/末原美裕

京都で長年活躍している目の肥えた方々が足繁く通うお店は、間違いなく感動と出会えるところ。本連載では目利きの京都人の方が太鼓判を押すお店を紹介していきます。

今回京都人のお墨付きの場所を教えてくれるのは、「京料理 貴与次郎」店主・堀井哲也(ほりい てつや)さん。堀井さんは京都の老舗旅館「柊家」で永年修行を積み、料理長として活躍後、2011年に二条城のふもとに「京料理 貴与次郎」を開く。“ほんまもん”の京料理を味わえる数少ない名店でありながら、敷居の高さを感じさせない気さくな雰囲気も相まって、地元京都はもちろん、日本全国・海外から通うリピーター客も多い。

(堀井さんおすすめの鮮魚卸「ふじわら」はこちら、和菓子「中村軒」はこちらから)

古い京町家を改装した「貴与次郎」は風情がありながらも、そこかしこから人の温もりが感じられる。「貴与次郎の特徴を挙げるとしたらフレンドリーなところかもしれません。小難しい作法ばかりを気にして食事をしても、味そのものがわからなくなってしまうようでは、もったいないですよね。美味しさを第一に味わってもらいたいので、貴与次郎へは肩の力を抜いて来ていただきたいです」と堀井さん。

店内へと続く、雰囲気のある渡り廊下。

カウンターとテーブル席。堀井さんとお客さんの会話が店内を明るくする。この他にも個室がある。

「かつて料理長を務めた柊家は格式の高い場所でした。ですから、『貴与次郎』は敷居の高さを感じさせず、小さな子どもから若い人まで楽しめるお店にしたいと思って開店したんです。その思いは10年経った今も変わりませんね」と堀井さん。店内には子どもの姿も見られる。少し大人の雰囲気を感じながら、京料理を頬張る姿が印象的だ。「お客様のお子さんの成長を見せてもらえることも非常にうれしいことなんです」と堀井さん。
「お客様のリクエストに応えながら、貴与次郎の味もどんどん進化していっています」とおっしゃるほど、貴与次郎と客の絆は強い。

子どもにも本物の食器で料理が提供される。刺身をのせた皿は瑞古(ずいこ)作の清水焼。

掘り出し物の京焼・清水焼が見つかる
「今村陶器店」

「貴与次郎をオープンする際、食器から箸置きまですべての清水焼を揃えていただきました。先ほど出てきた刺身皿も今村陶器店さんより購入したものですね。目利きが厳選した陶器が揃っていますよ」と堀井さんがおすすめしてくれたのは、清水焼のふるさと、五条坂から清水寺に続く茶わん坂にある「今村陶器店」。

店内には数多くの陶器が並んでいるので、目移りしてしまう。

「他店では手に入らないような昭和初期のいい作品がたくさん置いてありますよ。1枚8万円のお皿がその辺に無造作に重ねて置いてあったりするので、びっくりするんですけどね(笑)」と堀井さん。その言葉は誇張ではなく、広いとは言えない店内には、所狭しと名品が数多く並んでいる。
今村陶器店・店主の今村節子さんに話をうかがったところ、「昭和初期は清水焼の職人も多く、豊かな作品が多いんですよ」と教えてくださった。

刺身皿と同じく瑞古作のもの。「内側まで絵が描かれているのが特徴です。今ではこの技術を持っている職人はいないですね」と今村さん。

こちらも瑞古作の酒器。15年前に作られたもので、細かな模様はすべて手描きによるものだ。

「私ももう70代ですし、新たな仕入れはしていないんです」と今村さん。そうお話しいただいている間にもお客さんはひっきりなしに今村陶器店を訪れる。「掘り出し物があるんじゃないかと思って、見にくる人が多いのよ」と今村さんは微笑む。

お皿、茶器、花器、大きい陶器から小さい陶器まであらゆるものが揃っている。

手軽に持ち帰ることができて、バラエティ豊かな箸置きも人気だ。

お客さんたちのお見立て通り、今村陶器店には清水焼の掘り出し物が数多くある。丹念に見ていく必要があるので、訪れるなら時間を多めに見積もって置くことをおすすめする。

 

■堀井哲也(ほりい てつや)さん
「京料理 貴与次郎」店主。老舗旅館「柊家」で永年修行を積み、料理長を経て2011年に「京料理 貴与次郎」開業。“貴与次郎”という店名は、店主の日舞の師匠が命名。

■京料理 貴与次郎
営業時間:11:30-14:00、17:30-21:00
定休日:月曜(祝日の場合は翌日休)
住所:京都市中京区油小路三条上ル宗林町92
TEL:074-213-1313
アクセス:地下鉄「二条城駅」2番出口より徒歩5分、「烏丸御池駅」4-1出口より徒歩10分
昼のコース2,800円〜、夜のコース7,000円〜
https://kiyojirou.com

■今村陶器店
営業時間:10:00〜16:00(※日によって異なるので、訪れる際は事前に確認をしておくことをお勧めします)
住所:京都市東山区清水新道一丁目287
TEL:075-561-2768
http://www.chawanzaka.com/imamura-tokiten/

取材・文/末原美裕
小学館で11年間雑誌の編集部門において実務経験を経たのちに独立。フリーの編集者・ライター・Webディレクターに。京都メディアライン(https://kyotomedialine.com Facebook:https://www.facebook.com/kyotomedialine/)代表。2014年、文化と自然豊かな京都に移住。

 

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