使節団滞在後に出現したハポン姓
そんな報われない遣欧使節だったが、400年の時を経て日本とスペインの友好に大きく貢献している。

コリア・デル・リオの町並み。
ハポン姓の人たちが本当に日本人の子孫であるかは定かではない。ただ、コリア・デル・リオの教会の洗礼台帳によると、使節団滞在以前には存在しない苗字だったという。スペインでは出身地由来の苗字は珍しくない。
また、周辺の田んぼではスペインで一般的な直播ではなく苗を植え、ハポン姓の赤ちゃんに蒙古斑が出ることがあるのも理由として挙げられている(蒙古斑はアジア特有の症状であり、通常スペイン人には出ないとされている)。自分たちに日本の血が流れているかどうかが確かでなくとも、ハポン姓の人たちはそう信じ、それを誇りに思い、遠い先祖の国に親しみを覚えている。

日西間の歴史研究と友好親善促進に大きく寄与したことで旭日中綬章を叙勲された日西支倉協会フアン・マヌエル・スアレス・ハポン氏(右)
写真提供:Juan Manuel Suarez Japón
スペインでもっとも親日的な町
それゆえこの町はスペインでもっとも親日的である。東北の大震災の際は支倉常長像のまわりに花が捧げられ、ハポン姓の人々が集まり祈りを寄せた。支倉常長直系の子孫である13代目の常隆さんも2012年にこの町を訪れ、日本スペイン交流400周年にあたる2013年には日本の皇太子殿下が桜の植樹をされている。市役所には日本の旗が掲げられ、町を歩くと理髪と漢字で書かれた理髪店やSENDAIという名前の保険代理店が。訪れる日本人に、ハポン姓の人が話しかけることもあるそうだ。

市庁舎でスペイン国旗やアンダルシア州旗とともにはためく日本の旗。
写真提供:堀池麻樹
コリア・デル・リオへのアクセスはセビーリャからバスで30~40分。特に観光地化されている場所ではないが、これを機に400年前にサムライ達がいた町に足を伸ばし歴史に思いを馳せてみるのはいかがだろうか。
文・写真(クレジットのないもの)/田川敬子(スペイン在住)
2002年よりスペイン在住。オリーブオイル専門家としてスペインと日本で活動するかたわら、ライターとしてスペイン情報も発信。海外書き人クラブ所属(http://www.kaigaikakibito.com/)。
