夕方になると、どこからか独特の音楽が聞こえてくる賑やかな島、バリ。その南国の島が静まりかえる日が1年に一度だけあるという。不思議な年末年始を過ごしに、バリのウブドに向かいました。
バリ島の知られざる年末年始
美しい寺院やエネルギーに溢れるダンス、きらびやかな衣装にエキゾチックなバリ料理……と、何度、訪れても飽きないバリ。しかし、そのバリが静寂に包まれる日が年に一度だけあるのをご存知でしょうか? それは新年。西暦の1月1日ではなく、バリの「サカ暦」の年末年始なので、毎年、日にちが少しづつ変わるのです。
それを知ったのは、数年前、1か月ほどバリに滞在していたときのことです。民宿でのんびり過ごしていると、ドンドン、カンカン!という、けたたましい音に飛び起きてベランダに出てみれば、民宿の女性スタッフが朝から何やら庭で太鼓や鍋を木の棒で叩いています。
「いったい何しているの?」
「今日は悪魔を祓う日なんだよ。後でサッカー場に行くといいわ。たくさんの悪魔のハリボテが集まってくるから」
松明を手にしたお姉さんも家から飛び出して、「そりゃー!悪魔出ていけー!!」とばかりに、いつもの静かな庭が今日は大騒ぎです。
「ところでお客さん、明日、ニュピだって知ってる?」
「ニュピ?」
「バリの新年のこと。明日は部屋の電気もつけないでね。警察に叱られるから。それから外に出たら捕まって罰金とられるよ」
「何でめでたい新年に?」
「バリの新年は、瞑想して静かに過ごす決まりなの。テレビもやってないし、飛行機も飛ばないからね」
「変わった新年だこと!」
「もちろんレストランもやってないから、今のうちに何か買っておいたほうがいいよ」
世界にそんな年末年始があったとは。あわてて、市場に1日分のバナナを買いに行きました。翌日、薄暗い部屋のなかで、一日中、バナナを食べて読書をして一人で過ごしました。なるほど、この時期、どおりで観光客は少ない訳です。