イポーから車で北に約3時間、ウミガメの形をしたペナン島へ。17世紀ごろから「海のシルクロード」の重要な寄港地として栄えたエキゾチックな島で、ギャング映画の舞台のような海上集落や絢爛豪華なプラナカンの家を訪ねました。
■同じ姓の人ばかり暮らす海上集落
もやしのおいしいイポーの街を離れ、これからペナン島に向かうというので、どこかで船に乗り換えるのかと思ったら、私たちを乗せた車は木更津と川崎を結ぶ「海ほたる」のような長い長い橋を渡り始めまいた。島が近づくにつれ、カラフルな木の家が沖に向かって一直線に並んでいるのが見えてきたのですが、あれは何でしょう?
「あれ? 姓桟橋(かばねさんばし)といって、中国の福建人たちが移住して作ったの。海上集落には今も人が住んでるよ」とガイドの書さん。19世紀の終わりごろ、貿易で栄えたペナン島には、たくさんの船が寄港したのですが、その荷物の積み下ろし場所として桟橋をあちこちに建設。最初は桟橋だけだったけれど、船の待合所として簡単な小屋が建てられ、「どうせなら住まいもここに作ってしまえば便利だよね」とばかりに、どんどん住居が増えていきました。
おもしろいのは、それぞれの桟橋に「王氏桟橋」「林氏桟橋」「周氏桟橋」と名前がついていること。桟橋ごとに同じ姓を持つ人たちが固まって暮らしているそうです。福建の海沿いで暮らしていた人たちが一族を頼り、ペナンに出稼ぎに来て拡大したそうですが、血縁を大事にする中華系の人たちならではの結束力ではないでしょうか。特に親戚ではなくても、同じ姓なら受け入れ助け合ったそうです。
もし、私が生活に困ったとして、「白石一族を頼って白石桟橋に行けばなんとかなる」としたら、だいぶ気分も楽なのに……とうらやましく思っているうち、車は数ある桟橋のなかでも一番大きい「周氏桟橋」に到着しました。