文・アンヌ遙香
ステンドグラスが美しい寺院、と聞くと真っ先に思い浮かぶ光景はどんなものでしょうか?

フランスやイタリアのカトリック教会。薄暗い教会の回廊に、ステンドグラスのブルーの光が柔らかく差し込む……というものをイメージされる方がほとんどでしょう。ステンドグラス、たしかに美しく、眺めているだけでも心が洗われるような気持ちになりますが、実は「カトリック」「キリスト教」だけのものではないのです。
札幌西区、琴似の浄土真宗東本願寺派 建法山 浄恩寺には見事なステンドグラスがあると聞き付け、足を運んできました。浄土真宗のお寺でステンドグラス!?

まず到着して驚くのが、その山門のあまりの立派さ。北海道といえば本州に比べれば比較的お寺や神社の古さという観点では歴史が新しい地、というイメージでしょう。
しかしそもそも琴似という土地は、明治8年(1875)、北海道で初めて屯田兵が入植した地。


屯田兵が実際に生活していたという場所が現在無料の資料館として開放されており、そちらもこのお寺から近いところにあり。歴史好きの人にはたまらない土地でもあるのが琴似である、ともいえます。
開拓のためこの地に住居を構えた住民のほとんどが浄土真宗門徒であったという背景があるそうで、浄恩寺は地元の皆様から長く愛されている古刹となっているとのこと。
平成10年(1998)に建てられた鐘楼山門は、釘を一本も使わないという伝統的木造建築。あまりに精巧であり、かつ豪奢で重厚なつくりに思わず足を止めて眺めてしまう不思議な迫力があります。

京都の知恩院の山門に上ったときはその眺めの良さと風の心地よさが最高だったな……こちらの山門も登れたらよいのに、なんて考えていたところ、なんとこちらの山門、琴似の除夜の鐘スポットとしても有名なんだそう! なに!?
山門の上の部分には鐘があるとのことなのです。
大晦日、どなたでも鐘をついていただけますよ、との言葉を耳にした私。除夜の鐘というものをこれまで一度もついたことがなかったのですが、今年はこちらで挑戦してみたいところ。

さあそんな素晴らしい山門をくぐったあとには寺務所へ。
こちらのお寺はどなたでもいつでもいらしてください、とのスタンスをとってくださっていますが、法要などが営まれているときもありますので、ステンドグラスをどうしても拝見したいという方は事前の電話予約をおすすめします。
期待高まるステンドグラス、ご案内をいただき会館へ。

こちらは国内初めての取り組みだったそうで、およそ2年の月日をかけて札幌のガラス職人により制作されたものだそう。
「第八代蓮如上人御一代絵巻」と「親鸞聖人御絵伝」をステンドグラス化。光を燦燦と受けてかがやく大きなステンドグラスにまずは圧倒されます。お寺でこんな美しいステンドグラスを拝見できるなんて、と思わず感嘆の声をあげたくなりました。
さすが、絵巻物がモチーフになっているだけあり、よくみると人物の生え際や、松の表現など、細かいところまでしっかりと再現がなされており、思わずため息。

神秘さを感じる浄土真宗中興の祖蓮如上人の生涯、また浄土真宗開祖親鸞聖人の生涯を描いたもの。
たとえば親鸞聖人を描いた方は、よく見れば肌の表現が他の僧侶とはまた違うことがわかります。親鸞聖人の幼いころから、修行のとき、山で襲われそうになったとき、島流し、など「悪人正機説」を提唱し念仏の教えを広め続けた生涯の主要な出来事が美しく図絵としてまとめられているのです。

私は昼すぎにお邪魔しましたが、おすすめは朝、とのこと。
仏像でも、絵図でもない、ステンドグラスという新たな方法でお寺を満喫できる、なかなかできない体験ではないでしょうか。
さて、いつもの通りグルメ情報を。

浄恩寺の目の前には、美味しいバウムクーヘン専門店が。その名も「ダンケ」。その季節ごとの限定の味もあり、その種類の豊富さにおどろき。私がお邪魔したときは紫芋、カボチャ味がありました。しっとりしていて香高いバウムクーヘンは様々な種類を試したくなること間違いなし。

そもそも琴似は赤ちょうちんがぶら下がる居酒屋や、大人気で予約必須のもつ焼き店、スナックなど、のん兵衛にはたまらないお店もたくさん。
スイーツを買って帰るのもいいけど、ちょっと一杯、という方にもおすすめのまち。いかがでしょうか?
アンヌ 遙香(あんぬ・はるか)
元TBSアナウンサー(小林悠名義)。現在は札幌中心にフリーアナウンサー、文筆業、美容やアロマテラピー、話し方講座などのスクール講師として活動。出演番組:HBC北海道放送の情報番組「今日ドキッ!」のコメンテーター等。
Instagram:@aromatherapyanne
