文・写真/織田村恭子(海外書き人クラブ/アイルランド在住ライター)
※「湿地遺体」の画像のある記事となります。そのような写真が苦手な方はご注意ください。
アイルランド人のルーツ古代ケルト人
ケルト人とはケルト語を話す諸民族の総称である。青銅器時代に中央ヨーロッパに渡来したケルト人は、紀元前5世紀頃から鉄器武器や馬を使い、西欧まで領土を拡げていく。欧州のケルト人の大部分は、後にゲルマン人やローマ人に征服されたが、アイルランド島に定住したケルト人たちはそれを逃れたため、古代アイルランドには本来のケルト文化が深く根づくことになる。
ケルトの祭りの一つハロウィン、その起源とされるアイルランドには、古代ケルトの秘密が多く隠されている。そんな古代アイルランドにタイムスリップしてみたいなら、おすすめはアイルランド国立博物館だ。
(https://www.museum.ie/en-IE/Museums/Archaeology/Visitor-Information/About-The-Museum)
そこのガラスケースに静かに横たわる二体のボグボディ(湿地遺体)。発見場所の地名から一人はクロニーキャバン人、もう一人はオールドクロウハン人と呼ばれる。かつて人生を謳歌したであろうその遺体を見ていると、今にも彼らが声なき声でその秘密を語りかけてくるような不思議な感覚にとらわれる。
おしゃれな伊達男、クロニーキャバン人
2003年3月、ミースとオファリーの県境での泥炭採掘中、人間の半身が掘り出された。裸の遺体は保存状態が良かったため、驚愕した発見者はIRAの犠牲者だと思いこみ警察に通報した。 IRAとは1970~1990年代に北アイルランドからの英国勢力排除とアイルランド統一を目標に掲げ、多くのテロ、誘拐、殺人事件を起こした武装組織だ。駆け付けた警察も殺人事件と断定した。
ところが、“殺人事件”はここから 予想外の展開をみせる。続いて行われた監察医、考古学者の調査で、遺体は確かに殺人の被害者と判定されたが、なんとその死亡時期が2300年以上前だったのである。
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