文・写真/角谷剛(海外書き人クラブ/米国在住ライター)

ロサンゼルス近郊の都市パサデナにあるローズ・ボウル(1922年開場)は100年以上の歴史を持ち、アメリカ合衆国国定歴史建造物に指定された由緒あるスタジアムである。毎年正月に大学アメフトにおける最大のイベントのひとつである同名「ローズ・ボウル」とローズ・パレードが開催されることで有名だ。

このローズ・ボウルで毎月第2日曜日に蚤の市が開かれている。主催者ウェブサイト(https://www.rgcshows.com/rose-bowl/)によると、出店ベンダー数2,500以上、来訪者20,000人を越える、世界最大級の蚤の市ということだ。

ローズ・ボウル入口。

入場料13ドル(約2,080円)を払って会場に入ると、地図を手渡される。広大なスタジアムを囲む敷地内はベンダーが扱うモノの種類によってエリアが大まかに色分けされているので、自分の興味に合わせて向かうべき方向を決めるとよい。オレンジ:骨董品、白:古着、紫:芸術品、といった具合である。

店はまさに多種多様。整然と商品が並べられた店もあれば、家にある古いモノを一切合切持ってきて並べましたみたいな店もある。

スタジアムの外周に沿って店が並んでいる。

一般の開場は朝9時なのだが、VIPと称して早朝の時間帯(午前5時から8時45分まで)に入場できるチケットも販売している。こちらの方が、20ドル(約3,200円)と価格が高い。

季節にもよるが、朝5時といえば辺りは真っ暗なはず。なぜそんな早い時間に、しかも高い費用を払ってまで入場するのか不思議ではあるが、たぶん誰よりも早く掘り出し物を買い占めたい人がいるのだろう。

筆者が9時半ごろに入場すると、日本語で会話をしながら、すでに大量の古着を手押しカートに積み上げていたグループを見た。日本から買出しにやってきた業者なのかもしれない。

古着エリア内の店(1)。

ところで、「蚤の市」という奇妙な名詞はフランス語(marché aux puces)から由来しているとの説が有力だ。使い古された商品の多くがぼろぼろで、蚤(puces)がついていることが多かったからだと言うのだが、それはちょっとあんまりではないかと個人的には感じる。

とにかく、そのフランス語は英語ではFlea Marketと直訳される。ここでのイベント名も「Rose Bowl Flea Market」だ。

日本語も直訳の「蚤の市」を使用していれば問題ないのだが、同じような形態のイベントを「フリーマーケット」と呼ぶことがあり、この言葉を英語圏でそのまま使うと、多少ややこしいことになる。

カタカナで「フリー」と表記されると、多くの日本人は「Free」だと思うだろう。「自由」あるいは「タダ」を意味する単語だ。日本人にとってはR とLは同じ音だが、英語のFlea(蚤)はFreeとはまったく違う言葉であるし、英語ネイティブの耳には違う音に聞こえるので要注意だ。

古着エリア内の店(2)。

なにはともあれ、ここでは多彩な種類の中古品を目にすることも、少し趣向の変わったショッピングを楽しむこともできる。家に持ち帰っても、蚤はついてこない(たぶん)。

古いモノには興味がないという人も、ローズ・ボウルは訪ねてみる価値がある建物だ。なにしろ、このスタジアムは国際的なスポーツ史にも名を刻んでいるのだ。

1932年と1984年のロサンゼルス・オリンピックではそれぞれ自転車競技と陸上競技の会場になった。4年後に迫った2028年のオリンピックでも競技会場となることが決定している。同じ施設で3度オリンピックの会場となるのは、やはりロサンゼルスのメモリアル・コロシアムとこのローズ・ボウルだけである。

関連記事:3度目のオリンピック聖火を迎えるロサンゼルス・ メモリアル・コロシアム(https://serai.jp/tour/1116467

ローズ・ボウルはFIFAワールドカップの決勝戦を男子・女子の両方で開催した世界唯一の会場でもある。1994年のFIFA男子ワールドカップ大会と1999年のFIFA女子ワールドカップはどちらもこのスタジアムで決勝戦が行われた。

前述した通り、ローズ・ボウルで蚤の市が行われるのは毎月第2日曜日だが、それとは別にスタジアム見学ツアー(https://www.rosebowlstadium.com/events/details/408/public-tours)が毎月の最終金曜日に開催されている。スケジュールの都合が合えば、こちらもおススメだ。

スタジアム入口近くに建つジャッキー・ロビンソンの銅像。史上初の黒人メジャーリーガーはパサデナ出身であり、大学アメフトのスター選手でもあった。

パサデナはロサンゼルスのごく近くにあるが、独自の歴史を誇る街である。東京と横浜、あるいは大阪と神戸の関係を連想しても、さほどかけ離れてはいないだろう。鉄道の駅(Memorial Park)もあるので、街歩きも楽しい。

パサデナ市庁舎(1927年完成)はロサンゼルス市庁舎(1928年完成)より古い。

ローズ・ボウルは駅からは3kmほど離れている。歩けない距離ではないが、駅からのシャトルバス(https://metrolinktrains.com/explore/los-angeles-county/rose-bowl-stadium/ )を利用することもできる。

Rose Bowl Stadium
1001 Rose Bowl Dr, Pasadena, CA 91103
https://www.rosebowlstadium.com/

文・写真 角谷剛
日本生まれ米国在住ライター。米国で高校、日本で大学を卒業し、日米両国でIT系会社員生活を25年過ごしたのちに、趣味のスポーツがこうじてコーチ業に転身。日本のメディア多数で執筆。世界100ヵ国以上の現地在住日本人ライターの組織「海外書き人クラブ」(https://www.kaigaikakibito.com/)会員。

 

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