東京藝術大学といえば、日本における美術教育の最高峰として広く知られています。「藝大式XX教育」「藝大流◯◯のススメ」・・・といったタイトルの本も多く、書店などで見かけると、「一体どんな内容なのだろう」と興味を惹かれ、つい手に取ってしまう人も少なくないでしょう。そんな東京藝術大学には120年以上の歴史と伝統を誇る、ある特別な教育プログラムが存在することをご存知でしょうか?
それが、通称「古美研(こびけん)」と呼ばれる「古美術研究旅行」です。
この「古美研」が始まったのは明治時代。東京藝術大学の前身である東京美術学校の時代です。初代校長・岡倉天心は、「制作のためには古典を学ぶべきだ」と京都・奈良の古社寺に伝わる美術作品を見て回ることを奨励し、授業の一貫として現地研修を取り入れました。それ以来、教員が生徒たちを引率して、近畿地方を旅して古美術を訪ねて回る「古美研」は藝大の名物授業として連綿と続いていくことになります。
今も藝大では「古美研」は各美術学科の必修科目として実施されています。昼は通称「古美研バス」と呼ばれる大型バスを貸し切って京都・奈良の名刹を拝観・見学して回り、夜は藝大が「古美研」のために設立した専用の宿泊施設で過ごし、参加者同士で親睦を深めます。まるで修学旅行のような「古美研」は、現役の藝大生にも大人気。「古美研」を心待ちにする学生も多いといいます。
「古美研」が何よりも大切にしているのは、教員と学生が同じ場所で同じ作品を見るということです。常勤の教員や教育研究助手と一緒に古寺を訪問し、いつもとは違う特別な空間のなかで鑑賞体験を共有したり、同じ古美研施設で寝食をともにしたりすることで、教員と生徒、生徒同士の絆が深まっていくのです。
伝統の「古美研」を体感できる大人の体験ツアーも開催中
実は、この「古美研」ですが、近年は藝大生ではなくても参加できる機会が設けられました。それが、学外の一般参加希望者を募って2022年秋から行われている「おとなの古美研ツアー」です。2024年秋も、9月29日~30日にかけてその第4回目が開催されることになりました。
この「おとなの古美研ツアー」では、引率教員と参加者が一緒にバスに乗車して移動し、京都・奈良の名刹を訪問。旅風情を味わいながら、教員との密接なコミュニケーションを通して一体感が得られる「古美研」のエッセンスを1泊2日に凝縮。藝大生と同じ視点・目線で古美術を学ぶことができます。
特に注目したいのが、現役研究者の専門的な視点から仏教美術をみられるという点です。たとえば、仏像と向き合うときは、美術史の流れに沿って造形的な特質から制作年代や制作者を推定したり、彫刻家の視点から作品の構造や素材、技法の調査を通してその再現・修復方法を探ったり、他のツアーガイドではあまり聞くことのできない知の最前線を体験できるのです。
この「おとなの古美研ツアー」が素晴らしいのは、東京藝術大学と奈良県ががっちりとタッグを組んで開催される点です。1泊2日のツアーのなかに、特別な鑑賞体験や学びが満載なのです。たとえば、第4回での主な見学行程をピックアップしてみると、
・秋季特別公開中の「東寺」で、年に2度しか見ることができない千手観音菩薩を拝観
・「東大寺」にて俊乗堂の特別拝観をはじめ、大仏殿、法華堂、戒壇堂を見学
・「平等院」にて日本を代表する仏師・定朝作の国宝・阿弥陀如来像を拝観
・「奈良歴史芸術文化村」で、彫刻家・修復家の重松優志氏による現地講義を拝聴
・現役藝大生による美術作品の鑑賞
といった、非常に充実したツアー内容が組まれています。
ちなみに、「おとなの」と冠が付けられているだけあって、食事やホテルも抜かりはありません。宿泊地は近鉄奈良駅からほど近い「ホテル花小路」で、2日目のランチは東大寺門前「夢風ひろば」内にあるレストラン「ならや東大寺店」でスペシャルメニューを堪能できます。
「おとなの古美研ツアー」は限定25名の募集です。五感で学び、仏像の魅力を体感できる秋の特別企画で、京都・奈良を満喫してみてはいかがでしょうか?
第4回「おとなの古美研ツアー」 基本情報
「東京藝術大学教員と行く!おとなの古美研」第4回~京都・奈良に息吹く至福の仏像を巡る~
開催日時:2024年9月29日(日)~30日(月)
旅行費用:1名83,000円(講師料、拝観料、昼食費、宿泊費等込)
集合場所:JR京都駅
解散場所:近鉄奈良駅
主な訪問先:東寺、平等院、東大寺、なら歴史芸術文化村など
主催:東京藝術大学
協力:奈良県
申込URL:https://tours.yamatobito.net/product/b-240929