結婚式のトレンドは時代によって変化してきました。バブル期のように華やかな結婚式が好まれた時もありましたが、近年は家族や大切な人との時間や質を重視する方が増えています。神前式には派手さはありませんが、神聖な空間で日本文化を感じることができ、身内との絆が深まる機会となるでしょう。
2023年に挙式された方の統計では、神前式は全体の18.9%と決して多いわけではありません。(参考:結婚トレンド調査2023 報告書【首都圏】)しかし、厳かな雰囲気の神前式は流行にとらわれず、一定層からは根強い人気があります。
本記事では、神前式の流れや相場、親の衣装をご紹介します。
目次
神前式とは?
神前式の流れ
神前式の相場
神前式での両親の服装
最後に
神前式とは?
神前式とは、神社に祀られている神の前で結婚を誓う、伝統的な挙式形式のことです。「神前」という名称なので、宗教的要素が強い印象ですが、本来は「ご先祖様に結婚を誓う意味合いが強い」といわれています。「婚礼は身内のお祝いごと」との考え方から、挙式に参列するのは両親、両家の親族、仲人がいる場合は仲人までが基本です。
ご両親の中には「神前式=神社で行なうもの」とお考えの方は多いかもしれませんが、神前式は神社だけでなく、ホテルや結婚式会場に神殿が備わっていれば、神社以外でも挙式できます。
ホテルや式場で行なう神前式であれば、収容人数に余裕があれば知人も参列可能で、式場から披露宴への移動がスムーズなのでゲストの負担を減らすことができます。ゲストの数や顔ぶれによって、神社以外の選択肢があるのは心強いものです。
神前式の歴史
現在の神前式は、明治33年に当時の皇太子であった大正天皇のご成婚をきっかけに、東京大神宮が始めたものとされています。一般人に広まったのは第二次世界大戦後といわれており、昭和30年代後半に急増し、1950年代には8割強の夫婦が神前式だったといわれています。神前式は古来からの挙式形式だと考えがちですが、意外と新しいものです。
神前式の流れ
神前式の一つひとつの儀式にはそれぞれ意味があります。事前に理解しておけば、心の準備ができます。挙式時間はおよそ30分程度です。会場にもよりますが、ここでは一般的な神前式の流れをご紹介します。
1:参進の儀(さんしんのぎ)
「花嫁行列」とも呼ばれます。斎王・巫女に先導され、新郎新婦とその後に参列者が列になって神殿へ向かいます。
2:入場
新郎新婦、両親、親族と血縁が近い順に本殿に入場します。神前に向かい右側が新郎の親族、左側に新婦の親族が座ります。
3:修祓の儀(しゅばつのぎ)
全員が起立し、頭を下げてお祓いを受けます。その後、斎主が神様に召し上がっていただくものを捧げます。
4:祝詞奏上(のりとそうじょう)
「祝詞(のりと)」とは、神に伝える独自の言葉のこと。斎主が祝詞を読み上げ、神に両家の結婚の報告をします。
5:三献の儀(さんこんのぎ)
大・中・小の盃に分けられた御神酒を新郎新婦が交互に3回に分けて飲みます。「一の盃:新郎から新婦 二の盃:新婦から新郎 三の盃:新郎から新婦」の順番です。
6:指輪の交換
お互いの薬指に指輪をはめます。本来この演出は神前式にはありませんでしたが、最近では定番の演出となっています。
7:誓詞奏上(せいしそうじょう)
新郎新婦が神前に進み、誓いの言葉が記された「誓詞」を読み上げます。
8:玉串奉奠(たまぐしほうてん)
玉串とは、榊(さかき)などの常緑樹の枝に紙垂(しで)という白い紙を付けたもの。神と新郎新婦をつなぐ役割があるとされています。
9:神楽奉納(かぐらほうのう)
巫女が舞を奉納します。神社によってはオプションの演出であるケースもあるので、注意が必要です。
10:親族杯の儀(しんぞくはいのぎ)
両家の結びつきを祝い、親族全員が御神酒を3回で飲み干します。
11:斎主挨拶
一同が神前に拝礼し、斎主が神に式の終了を報告します。
12:退場
斎主に続き、新郎新婦、参列者の順で退室します。
神前式の相場
神社で神前式を行なう場合は「初穂料(玉串料)」と呼ばれる謝礼金を納めます。神社により異なりますが、相場は5~10万円程です。これに衣装代など、別途費用が必要になります。
神社によっては衣装代や美容代、撮影代、介添料が含まれているオリジナルのプランも存在し、相場は30万円前後のところが多いです。プランに初穂料が含まれていないこともあるので、注意しましょう。
式の後に会食や披露宴を行なう場合は、さらに披露宴費用が加算されます。式のみ神社で披露宴は大勢のゲストを招く場合は、個人では会場の手配が大変なこともあります。その場合は、プロデュース会社に依頼するのも一つの方法です。神社によっては、ホテルなどの会場と提携しているケースもあります。
神前式での両親の服装
神前式では最も格が高い「正礼装」を着用する新郎新婦が多いので、基本的には両親も格を合わせます。両家両親の衣装の格も合わせておきましょう。衣装に格差が出てしまうと、深い意味はなかったとしてもお互い気まずい思いをしてしまいます。晴れ舞台に水を差さないためにも、事前に両家での意思疎通は必要です。
ここでは、父親と母親の神前式での衣装をご紹介します。
父親
父親が神前式で着用する衣装は「黒五つ紋付き羽織袴」もしくは「モーニングコート」のどちらかが一般的です。
黒五つ紋付き羽織袴の注意点は、新郎と被らないよう配慮することです。まったく同じデザインだと、新郎との違いがなくなってしまいかねません。対策としては、袴の模様の大きさが異なるものを選んだり、茶袴を選びましょう。
モーニングコートの場合は、デザインの種類は限られています。店舗によっては一種類のみのことも多いです。以前はあえて大きめに着るものが主流でしたが、最近では細身に着こなすタイプが好まれています。
母親
神前式での母親の衣装は「五つ紋付き黒留袖」もしくは「アフタヌーンドレス」になります。一般的には、黒留袖を選ばれる方が多い印象です。
「神前式だから黒留袖の柄の色はこうあるべき」などの決まりはありませんが、今風のカラフルなものよりは、朱色やベージュ、ゴールドなどの落ち着いた色味が好まれる傾向にあります。黒留袖の柄の定番といえば、鶴や熨斗(のし)、松ですが、華やかなものがお好みであれば、花柄がメインのものを選ばれる方もいらっしゃいます。
自前で黒留袖を準備する場合は、草履などの小物類も確認しておきましょう。神社は砂利の道であるところも多く、数年ぶりに出した草履が劣化し、式が始まるまでに破損された方もいらっしゃいました。小物だけレンタル可能な店舗もあるので、必要に応じて検討されてみてはいかがでしょうか。
最後に
神前式は、両家の結びつきを意識する挙式形式です。厳かな雰囲気に包まれながら、神や先祖に思いをはせて、これからの新郎新婦の幸せを願いましょう。
監修/トップウエディング https://top-wedding.jp/
構成・執筆/吉川沙織(京都メディアライン)
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