文・写真/坪井由美子(海外書き人クラブ/ドイツ在住ライター)

「世界で最も美しい駅」のひとつ

巨大なライプツィヒ中央駅のエントランスホール。重厚な美しさに息をのむ。

その町の玄関口として、多くの旅行者が最初に降り立つ場所となる「駅」。列車で到着後は、すぐにホテルや次の目的地へ向かう人がほとんどだろう。だが、ドイツには通り過ぎるだけではもったいない「特別な駅」がある。その筆頭ともいえるのがライプツィヒ中央駅。世界で最も美しい駅のひとつと称賛され、今やライプツィヒの観光名所となっている。とはいえ日本ではまだそれほど知られていない存在だろう。「ライプツィヒに行ったのに見逃していた!」と後悔する人が増えないように、ここで欧州最高に選ばれた駅の魅力をじっくりとご紹介したい。

ヨーロッパ格付け1位!ライプツィヒ中央駅

1915年に開業したライプツィヒ中央駅は、列車がここで行き止まりになる構造の頭端式駅としてはヨーロッパ最大級。83,460平方メートルの床面積を有し、一日に約15万人もの人が利用する巨大ターミナル駅だ。以前より鉄道ファンをはじめ一部では知られた存在だったが、2021年に「European Railway Station Index」というランキングで1位に輝き知名度が急上昇。世界中から注目される駅となった。このランキングは消費者保護団体のConsumer Choice Centerが様々な要素に基づき毎年格付けしているもので、2021年版のトップ10には、ドイツからは1位のライプツィヒと同点5位のフランクフルト、ミュンヘンの3駅がランクインしている。

駅内のショッピング街、プロメナーデンはモダンな雰囲気。重厚な駅舎とのギャップが面白い。

ライプツィヒ中央駅の選考理由のひとつとされるのが、構内にある3階建ての商業施設「プロメナーデン」の充実ぶり。30,000平方メートルもの面積にレストランやスーパー、ブティックなど約140の店舗が並び、食品から日用品、家電までたいていの物は手に入る。ドイツでは法律により日曜日は店舗を閉めなければならないが、駅内は例外で開けることができる。駅の利用者はもとより、市民にとっても心強い存在だ。

まるで映画のセット! 美しすぎるスタバ

レトロな待合室に作られたスターバックス。なんとも優雅な雰囲気。

かつて待合室だった場所を使った「スターバックス」も必見だ。店内に足を踏み入れた途端、圧倒されるほど高い天井と広々とした贅沢な空間が広がっている。宮殿と見紛うような豪華な装飾が施された喫茶室はレトロな趣たっぷりで、旅情をそそられる。今やスタバは世界のどこへ行っても見かけるが、これほどまでに美しい店舗はなかなかないだろう。ライプツィヒを訪れたなら、ここでゆっくりコーヒーを味わいながら、この駅が見続けてきた100年以上もの激動の歴史に思いを馳せてみたい。

スターバックスはプラットホーム階にあり、列車発着の様子が見渡せる。

24番線は歴史を伝える展示ホーム

24番線に展示された蒸気機関車。その後ろにあるのがフリーゲンダー・ハンブルガー。

ローカル線から特急列車まで毎日700以上もの列車が発着するこの駅には、20番線以上のプラットホームが並ぶ。普通は自分が利用するホーム以外にわざわざ行くことはないだろうが、ここではぜひ足を運んでみてほしいホームがある。出入り口を背にして右端にある24番線ホームが、じつは駅の歴史を伝える展示ホームとなっているのだ。ちなみにその奥のスペースは駐車場となっており、駅内に自動車が並ぶという、ちょっと珍しい光景が見られる。

駅を見渡せる駐車場にびっくり。

24番線には、第二次世界大戦前にベルリン‐ハンブルク間で運行され、当時の営業車両としては世界最速だった“空飛ぶハンブルク人”号「フリーゲンダー・ハンブルガー」と、第二次世界大戦中に量産された52形の蒸気機関車が展示されている。線路の上に直接展示されており、今にも動き出しそうだ。

第二次世界大戦で大部分が破壊された中央駅。100周年記念パネルより。

24番線のホームには、2015年に100周年を迎えたライプツィヒ中央駅の歩みがパネルで展示されている。この駅は、第二次世界大戦からドイツの東西分断と再統一まで、ドイツの激動の歴史をつぶさに見てきた。

ライプツィヒは、東西ドイツ再統一の発端となった市民運動の発祥の地として知られる。町の中心にあるニコライ教会で行われていた平和の祈りが民主化を求めるデモに繋がり、ベルリンの壁崩壊の導火線となった。平和の祈りは、今も毎週月曜日に続けられている。

ドイツ史に大きな影響を与えたライプツィヒは、自由と平和を象徴する町であると同時に、世界的な「音楽の都」でもある。中央駅をじっくり見学した後は街に出て歩いてみよう。そこかしこで偉大な音楽家たちの息吹が感じられることだろう。

ドイツ観光局:https://www.germany.travel/en/campaign/german-local-culture-jp/home.html
ライプツィヒ観光局:https://www.leipzig.travel/

文・写真/坪井由美子 ドイツ在住ライター。旅行、グルメ、文化などの分野において新聞、雑誌、ウェブ媒体で執筆。レシピ連載や食のリサーチも手掛ける食いしん坊。2020年『在欧手抜き料理帖』(まほろば社)出版。世界100ヵ国以上の現地在住日本人ライターの組織「海外書き人クラブ」(https://www.kaigaikakibito.com/)会員

 

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