文・写真/倉田直子(海外書き人クラブ/オランダ在住ライター)

大きな投票箱に、車から投票

コロナ禍の発生から1年が過ぎ、オランダではソーシャルディスタンスを保つルールが定着してきた。日々の生活に様々な工夫がなされるようになったが、それは選挙の投票スタイルにも反映されている。今回は、オランダで見られた「コロナ時代における投票の工夫」についてご紹介したい。

4年ぶりの第二院選挙

投票所に行列をつくる有権者たち(2017年撮影) (c)Naoko Kurata

二院制をとるオランダ議会の第二院(下院)は任期が4年で、2021年3月に4年ぶりの選挙が行われた。通常は上の画像(前回2017年の第二院選挙の際に撮影)のように、投票所は、いまで言う「密」の状態になっていた。これは、コロナ時代には危険なスタイルのため、今回(2021年)の選挙には、様々な投票バリエーションが生まれたのだ。

投票日の増設と郵便投票

まず講じられたのは、投票所を3日間開くという分散作戦。従来は投票日は一日のみだったが、今回は投票所に一斉に人が押し掛けるのを防ぐため、2021年3月15日から17日まで開かれることになった。

さらに新型コロナウィルスのリスクグループに所属しているとされる「70歳以上の有権者」には、郵便投票が認められた(ただし義務ではない)。事前に70歳以上の有権者の自宅に投票用紙や返信用封筒が送付されるので、それを返送して投票完了とするというシステムだ。対象となる高齢者の約三分の一がこの郵便投票を利用したのだそう。
ただし、慣れない郵便投票に手間取った高齢者も多かったという。投票用紙を封入する内封筒を使用しなかったり、既定の返信用封筒を使用しなかったりするミスが多発したのだそう。これらは無効票になってしまうので、次回の選挙までには救済策を講じる必要があると報道された。投票者の気持ちに応えるためにも、これはぜひ何とかしてほしいと筆者も考える。

ドライブスルー投票が登場

ドライブスルー投票のシステムを解説する看板
(c)Naoko Kurata

中でも筆者が注目したのが、「ドライブスルー投票」だ。これは全ての投票所でできた訳ではないが、多くの自治体が郊外の投票所などで採用した投票スタイルだ。

マスクと手袋を身に着けたスタッフから投票用紙を受け取り  (c)Naoko Kurata

簡単に流れを説明すると、まず投票所に直接車で乗りこみ、入り口付近のスタッフから投票用紙と赤鉛筆を受け取る。

大きな投票箱に、車から投票  (c)Naoko Kurata

そして車に乗ったまま投票用紙に記入。その後、数メートル先にある投票箱のところに車を横付けし、投票用紙を投函するのだ。自家用車があれば、投票の際の「密」を防げる有効な方法なのだ。しかも駐車場に停めたり車から降りる必要が無いので、投票者は非常にスムーズに感じるのではないだろうか。

「自転車スルー投票所」まで

自転車に乗るオランダ人(2017年撮影) (c)Naoko Kurata

その他にも、オランダならではの投票方法も。実はオランダは「国民よりも自転車の数のほうが多い」といわれる自転車大国。そんな日常の足の自転車でそのまま乗り込める「自転車スルー投票所」まで登場したのだ。筆者が見学に行った投票所にはなかったが、アムステルダムの市議会委員が当日の様子をツイートしている。
https://twitter.com/jan_bert/status/1372149048812126214

自転車の車体の分だけはソーシャルディスタンスを保てるので、これはこれで有効な「密」回避方法ではないだろうか。

投票日は夜間外出禁止令も緩和

投票の象徴、赤エンピツ (c)Naoko Kurata

オランダでは、投票用紙に記載された候補者の名前に赤鉛筆で印をつけて投票する形式を採用している。そのため、投票所には赤鉛筆が常備されている。従来はブースにチェーンで繋がれ、持ち帰れないようになっているが、コロナ禍では使用後の赤エンピツは消毒の必要性が出てくる。その手間を省くため、今回は多くの投票所が使用後の赤鉛筆を「お持ち帰りOK」にしたという。

実はオランダでは、2021年1月23日から「午後9時以降の夜間外出禁止令」が発令されていた(4月28日に解除済)。この選挙期間中もそれに該当したが、各投票所は3月17日の午後9時まで開かれることが決まっていた。そのため、「投票に行っていた、または投票所のスタッフだった」と口頭で説明できれば、「投票日当日は外出が午後9時より多少オーバーしても不問にする」と公式に発表されていたのだ。その際にこの赤エンピツを持っていれば、投票の証明になり更に心強いと噂された。厳密なルールも状況によって柔軟に対応できるのは、オランダらしいと感じる。

投票所への案内(2017年撮影) (c)Naoko Kurata

次回オランダの第二院選挙が行われるのは、2025年の予定。その頃には、どんな世界になっているだろう。また新しいスタイルが生まれているのか、それともコロナ以前のスタイルに舞い戻っているのか。オランダ住民として、4年後を非常に楽しみにしている。

文・写真/倉田直子(海外書き人クラブ/オランダ在住ライター)
北アフリカのリビア、イギリスのスコットランドでの生活を経て、2015年よりオランダ在住。主にオランダの文化・教育・子育て事情、タイニーハウスを中心とした建築関係について執筆している。海外書き人クラブ会員(https://www.kaigaikakibito.com/)。

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