神奈川県中北部の愛川町中津は、大正から昭和初期にかけて箒作りで栄えた地。その歴史は柳川常右衛門という人物が諸国を渡り歩き、箒の製造技術と原料となるホウキモロコシの栽培を学び、故郷の中津に広めたことに始まるという。だが昭和30年代になると掃除機の普及や、安価な海外製箒に押され、中津の箒は一旦廃れてしまう。
再興を目指したのは、常右衛門から数えて6代目の柳川直子氏。中津の箒のよさを後世に伝えるべく、平成15年に「まちづくり山上」を創業。中津に伝わる技術で作る箒を中津箒と名付け、職人たちと現代に合う箒を作っている。
その特徴はコシの強い穂先。掃くと適度にしなって折れにくく、手に負担も少ない。ほかの箒と掃き比べるとその差は歴然だ。
原料のホウキモロコシは無農薬で自社栽培。刈り取り後はすぐ脱穀し、天日干しでよい状態を保つ。「湯通ししないので油分が穂先に残り、畳などを傷めにくく、艶を与えます」と、柳川氏。
製造工程はすべて職人の手作業。穂先を1本ずつ丁寧にそろえ、天然素材で染めた糸で束ねていく。
「フローリングの溝の埃も掻き出せ、無音だから夜中でも使えます。箒は、祓い清めるという日本人の価値観に合う道具です」(柳川氏)
職人の吉田慎司氏と山田次郎氏が手がけた2種の箒を用意した。
【今日の逸品】
中津箒
まちづくり山上
11,000円~(消費税込み)