■鼻ツンは猫流の挨拶
猫の社会性について、もうひとつ。猫だって、ちゃんと挨拶をするんですよ。ちょっと離れたところにいる相手には、ぴーんと尻尾を立てて挨拶。人間が遠くから、「おーい」と手を振る感じでしょうか。そうやって尻尾を立てた状態でお互いに近づき、しっぽを絡ませあい、また、たまには「鼻ツン」で臭いチェックをします。それが、猫流挨拶の作法です。挨拶があるというのは、コミュニケーションツールがあるということ。それはつまり、社会性のある動物、ということなのでしょう。
ちなみに、人間も猫流に猫と挨拶することができるんですよ。さすがに尻尾での挨拶は無理ですが、よく知っている人間が指先やペンの先を猫の鼻に近づけると、ツンと鼻をつけ、ついでにすりっと頬をすり寄せてくれます。人間同士でも挨拶を交わすことはじつに気持ちがいいですよね。猫とも「鼻ツン」で楽しく挨拶してみてください。
《入交眞巳(いりまじり・まみ)さん プロフィール》
日本獣医畜産大学(現・日本獣医生命科学大学)卒業後、米国に学び、ジョージア大学付属獣医教育病院獣医行動科レジデント課程を修了。日本ではただひとり、アメリカ獣医行動学専門医の資格を持つ。北里大学獣医学部講師を経て、現在は日本獣医生命科学大学獣医学部で講師を勤める傍ら、同動物医療センターの行動診療科で診察をしている。
《わさびちゃんファミリー(わさびちゃんち)》
カラスに襲われて瀕死の子猫「わさびちゃん」を救助した北海道在住の若い夫妻、父さんと母さん。ふたりの献身的な介護と深い愛情で次第に元気になっていったわさびちゃんの姿は、ネット界で話題に。その後、突然その短い生涯を終えた子猫わさびちゃんの感動の実話をつづった『ありがとう!わさびちゃん』(小学館刊)と、わさびちゃん亡き後、夫妻が保護した子猫の「一味ちゃん」の物語『わさびちゃんちの一味ちゃん』(小学館刊)は、日本中の愛猫家の心を震わせ、これまでにも多くの不幸な猫の保護活動に大きく貢献している。
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