金継ぎ01
金継ぎの技法で修復した器。手前は大分県の小鹿田焼きの小皿、奥は明治から大正期にかけて量産された印判皿。

割れてしまった器、ほんの少し縁が欠けてしまった器。形あるものは、どんなに気を付けていても、不意に壊れてしまうことがあるものです。日本には、そのような器を、漆を使って修復する、伝統的な技術があります。それが「金継ぎ」です。

金継ぎの起源は非常に古く、縄文時代にまで遡ります。もともとは、土器を補修するのに漆を用いていたのが始まり。その後、室町時代になると茶の湯が盛んになり、漆で補修した上に、蒔絵の技法で金を施すようになりました。これにより、器の格を上げ、景色として楽しむ文化が生まれたのです。

近年、自然環境において「持続可能な社会」という理念が広がりを見せるなか、「物をいつまでも大切に使う」という価値観が見直され、金継ぎも注目を集めています。東京・御徒町の「播与漆工芸教室」(はりよしっこうげいきょうしつ)では、ここ数年で金継ぎの講座を希望する生徒が増加。同教室の講師、漆芸家の中島靖高さんは、こう話します。

「13年前、私がこの教室で教え始めたばかりの頃は、漆塗りの講座が主でしたが、6~7年前から、金継ぎを習いたいという人が増えています。年齢層は若い方からご年配の方まで様々ですが、割れた器を捨てられずに持っていて『ずっと習ってみたかった』という人が多いですね」

金継ぎ02
金継ぎを指導する、漆芸家の中島靖高さん。東京藝術大学大学院修了、2004年「岡本太郎記念現代芸術大賞」に入賞した経歴を持つ。

修復の手順を、割れた器を修復する場合を例にして、簡単に説明します。まず、割れた面を紙ヤスリで研ぎ、漆を染みこませてから、小麦粉を混ぜた漆の糊で器の断片を接合して乾かします。溝には固く練った漆を埋め込んで乾かし、接合部分の漆を研いで整えます。そこへ漆を塗って乾かし、再び漆を塗って金粉をほどこし、漆で固めて乾かし、表面を磨けば完成です。
それぞれの過程で使用する漆の種類は多岐に渡り、作業の都度、時間をかけて乾かすため、講座では、早くても修復を終えるまでにかかる期間は3か月ほどかかるといいます。

金継ぎ03
欠けた部分に蒔絵筆で「呂色漆」(ろいろうるし)を塗っているところ。このあと、いくつかの工程を経て、金を蒔(ま)きます。

また、短時間で修復する簡易の金継ぎのやり方もありますが、「器の修復にはあまりおすすめできません」と中島先生。その理由についても、教えていただきました。
「簡易のやり方は、合成樹脂や代用漆と呼ばれる化学塗料などが使われることが多いためです。私が指導する、“本漆”で修復する金継ぎの技法は、非常に時間も手間もかかりますが、口にする食べ物をのせる器には、天然素材を用いたいですよね。大切な器への愛着もいっそう強くなります」

処分できずにいた陶磁器を自分の手で直す技術、是非、身につけてみてはいかがでしょうか。

■播与漆工芸教室
住所/東京都台東区台東3-41-4 加藤ビル3階
電話/03-3834-1528(教室専用番号)
講習日/3回/月(各2時間)
入会金/10,800円
月謝/授業料14,040円+消耗費1,080円/月
URL:http://www.urushi.jp/

文/大沼聡子

 

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