文・写真/小坂眞吾(サライ編集長)
美味しく食べて長生きできる。いいことずくめなのが牛肉である。しかし、家でステーキを焼くと、和牛はたしかに美味しいのだが、国産牛や輸入牛はどこか味わいが物足りないと感じてしまうのは、小生に限ったことではあるまい。
ところが、街中のステーキ店でいただく国産牛や輸入牛や、海外でいただくその国の産の牛肉は、ちゃんと美味しく感じられるのである。もちろん、その道のプロが焼くのであるから、美味しくなくては困るのだが、私たち素人との違いはどこにあるのか。
その重要なポイントのひとつが「焼き方」にあった。最新号となる『サライ』7月号の「牛肉で長生き」特集では、肉料理の名店『マルディ・グラ』(東京・銀座)の和知徹さんに焼き方の秘訣を伝授していただいた。
その誌面を見ながら、小生も家で焼いてみた。その結果は……!
焼いたのは「岩手県 国内産牛ロースステーキ(交雑牛)」。近所のスーパーで、100g 698円のところ、閉店間際で半額。つまり100g 349円である。
ただし、肉の厚みは1センチほどしかない。和知さんいわく、薄い肉を家庭でステーキに焼くのはとても難しいのだそうだが、厚切りが売ってないので仕方ない。否応なく、無謀な挑戦に突入する。
サライの記事を読みつつ焼いてみる。和知さん伝授の「輸入牛のサーロインステーキを焼くコツ」の要点は、以下の通り。
①フライパンは鉄製を使うべし。
②厚さ3cm未満の肉は室温に戻さなくてよい。冷蔵庫から出したら塩と黒コショウをまんべんなく均一にふる。厚みがない分、塩も浸透しやすいので分量は控えめに。
③焼く際は強火でバターとともに一気に焼き上げるべし。中火でうっすら煙があがったフライパンに、サラダ油を敷いて肉を入れ、強火に。バターを入れたら、溶けきる直前にスプーンで肉の表面に数回かけまわす。火が入りすぎてしまわぬよう片面を強火でしっかり焼く。
④焼き色が付き、側面が白くなったら裏返す。
⑤肉を裏返したら火を止め、1分寝かせる。この寝かせる時間で焼き加減を調節する。
⑥仕上げは金串を使い肉の温度を下唇で確かめる。少し熱めの風呂の温度(42℃)が目安。
和知さんいわく「焼き過ぎを恐れてはいけない」とのこと。片面のみを強火で、焼き過ぎと思えるくらいしっかり焼くのが意外な発見だった。
和知さんの指南に忠実に焼き上げたステーキは、片面は焦げる寸前、もう片面は色こそ白いが焦げ目はいっさいなし。こんな状態で大丈夫なのか、半信半疑でひと口いただくと、「ウマイ~~~」(宮川大輔ふうに叫ぶ)。
切り口を見ると、見事なミディアムレア。自分史上、もっとも上手く焼けた1枚と断言いたします。
皆さんもぜひサライ7月号の牛肉特集をご覧になって、極上のミディアムレアに挑戦してみてください。
文・写真/小坂眞吾(サライ編集長)
※『サライ』2018年7月号では「牛肉で長生き」を特集しています。『マルディ・グラ』の和知徹さんはじめ有名シェフによる「世界一美味しい牛肉料理」調理指導のほか、牛肉の効用と知識、檀一雄流の伝説のビーフシチュー再現など、牛肉を積極的に食べたくなる情報満載です。