学ぶ意欲が高まる たしなみとしての「漢検」
日本漢字能力検定(通称・漢検)が、幅広い年齢層に人気だ。昭和50年(1975)に始まり、平成4年(1992)に文部省(当時)から、協会が財団法人の認可を受けた。これまでにのべ5000万人以上が受けたというから驚きだ。
漢検の試験問題作成に携わる上沼匡一さんによると、漢検受検者の最年少は3歳(10級)、最高齢は103歳(2級)という。なぜここまで人気なのか。
「ひとつは、受検資格が必要ないので、年齢に関係なく誰でも取り組めるということでしょう。実際、子ども、母親、祖母という3世代で受検するケースもありました。“漢検で孫と会話が増えた”というシニアの方も多くいます」(上沼さん、以下同)
試験問題にも秘密がある。
「漢検を、小中学校でやるような漢字書き取りテストと勘違いされている方がいますが、そういったテストではありません。同音異義語や対義語・類義語、四字熟語など多くの分野を出題しているのですが、これは、漢検を通じて、日本語の面白さを知ってもらい、実生活での日本語を豊かにするという狙いがあるんです」
「担板漢」とは
「担板漢(たんぱんかん)」
「鳳字(ほうじ)」
上のふたつは、最難関である1級で出題された熟語だ。
「『担板漢』は板をかつぐ男の意で、板に妨げられ一方しか見えない、転じて大局が見えない人の喩えです。
『鳳字』は鳳の字をふたつに分けると凡と鳥になります。なぞなぞのようですが、平凡な人物を『鳳字』とからかう言葉なんです。知識を得ると、何か心持ちが豊かになりますよね」
「漢検」の公式ホームページでは、簡単に受検級の目安をチェックできる。上沼さんのお勧めは、準2級(高校在学程度)や、2級(高校卒業・大学・一般程度)だ。
「準1級以上は難問揃いですが、2級までは現代社会の生活に即した漢字や言葉が出ます。まずはこのあたりを目標にしてはいかがでしょうか」
解説 上沼匡一(かみぬま きょういつ)さん(日本漢字能力検定協会・67歳)
京都で漢字の世界にひたる 漢字ミュージアムへの誘い
日本初の漢字の体験型施設として2016年に開館した漢検 漢字博物館・図書館こと「漢字ミュージアム」。漢字の成り立ちから、日本でどのように変容し発展したかなどについて楽しみながら学ぶ工夫が凝らされている。第一の見所は「今年の漢字」。実際に清水寺の森 清範(もり せいはん)貫主が揮毫(きごう)した大書を展示。第二の見所は、吹き抜けにそびえる「漢字5万字タワー」。壁面に『大漢和辞典』(大修館書店)に掲載の約5万字の漢字が記され、自分の名前に使われている漢字を探すなど見入ってしまいそう。ほかにも漢字を書く道具や素材についての展示や、画面に登場する寿司ネタを選ぶと、そのネタの漢字クイズが出題される漢字回転すし、漢字に関わる講座やワークショップなど趣向もさまざま。子どもから大人まで楽しめる。
漢字ミュージアム
住所:京都市東山区祇園町南側551
電話:075・757・8686
開館時間:9時30分〜17時(16時30分最終入館)
休館日:月曜(祝日や振替休日の場合は翌日)、年末年始、臨時休館あり
入館料:800円
交通:京阪本線祇園四条駅6番出口から徒歩約5分
別冊付録「漢検」で腕だめし|自分の“漢字レベル”を知るきっかけに
「漢検」の存在を知ってはいても、なかなか受検の決意に至らぬ人もいるだろう。どんな問題が出されるのか、どのような形式で答えるのか……そんな疑問を解消できる問題集が今号の別冊付録だ。
内容は2022年度に実施された試験問題と標準解答をサライ独自の視点で編集したもの。3級・準2級・2級・準1級・1級を掲載し、漢検の内容とそれぞれの級の難易度を把握する目安となる。この別冊付録を活用し、日本漢字能力検定協会が公式に発行する『漢検過去問題集』を試し、受検に挑んでみてはいかがだろう。
撮影/小林禎弘
※この記事は『サライ』本誌2024年9月号より転載しました。