柔らかい膝の上も大好き
猫によっては人の膝(ひざ)の上が大好きな子もいます。猫同士でくっついている様子を「猫団子」なんて呼んだりしますが、猫はそうやって、好きな者同士でくっついていると安心できて、居心地がいいようです。
膝の上に居座ることで、相手を征服した気分になっている、と説明する人もいます。猫好きさんたちはよく、自分のことを「猫の下僕」と呼んだりして猫にご奉仕している感覚を楽しみます。ですから、猫が膝に乗ったら、それは人を征服した気分になっているんだと解釈することで楽しんでいる人も多いようです。
ネズミなどの形をしたおもちゃの上にわざと乗ることもありますから、猫が何かの上に乗ることで「征服」欲を満たしていると考えられているのかもしれません。
実際には、猫は人を征服しようとか、人の上に立とうなどとは思わないようです。人と猫との関係は、人間の親子に似ていると私は考えています。人間の子供が自分の親を征服しようなどと思わないように、猫も飼い主さんのことを征服しようなどとはおそらく思っていないでしょう。
猫は、飼い主さんがそこにいるだけで嬉しく感じています。膝の上にいけば大好きな飼い主さんのより近くにいられるし、撫でてもらえるかもしれません。それに、人の膝の上は床より柔らかくて暖かいですよね。猫は柔らかいものがとにかく大好き。人間もふかふかのベッドを見るとテンションが上がったりしますが、それと同じで、猫もふわふわしたもの、柔らかいものを見ると嬉しくなってしまうのです。ましてそれが大好きな飼い主さんの膝なら、なおさらです。
入交眞巳(いりまじり・まみ)
日本獣医畜産大学(現・日本獣医生命科学大学)卒業後、米国に学び、ジョージア大学付属獣医教育病院獣医行動科レジデント課程を修了。日本ではただひとり、アメリカ獣医行動学専門医の資格を持つ。北里大学獣医学部講師を経て、現在は日本獣医生命科学大学獣医学部で講師を勤める傍ら、同動物医療センターの行動診療科で診察をしている。
■わさびちゃんファミリー(わさびちゃんち)
カラスに襲われて瀕死の子猫「わさびちゃん」を救助した北海道在住の若い夫妻。ふたりの献身的な介護と深い愛情で次第に元気になっていったわさびちゃんの姿は、ネット界で話題に。その後、突然その短い生涯を終えた子猫わさびちゃんの感動の実話をつづった『ありがとう!わさびちゃん』(小学館刊)と、わさびちゃん亡き後、夫妻が保護した子猫の「一味ちゃん」の物語『わさびちゃんちの一味ちゃん』(小学館刊)は、日本中の愛猫家の心を震わせ、これまでにも多くの不幸な猫の保護活動に大きく貢献している。
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