新着記事

江戸切子 蓋ちょこ|伝統と現代の趣向を合わせたモダンな切子グラス

本の土偶と埴輪にハマりすぎてしまった、一人の愛すべきフランス人

一体なぜ? 「縄文土偶」にハマりすぎたフランス人

【娘のきもち】依存し合う母娘。「私のようになってはいけない」という母の意思を受け継いだ娘が持つ結婚観とは~その2~

【娘のきもち】依存し合う母娘。「私のようになってはいけない」という母の意思を受け継いだ娘が持つ結婚観とは~その1~

75歳以上の“粗食”は“フレイル”(加齢による心身の衰弱)と関連|必要な食事量が摂れていない高齢者が多く存在

75歳以上は痩せている人の方が高リスク!? 高齢者の2人に1人が“フレイル”(加齢による心身の衰弱)の疑いあり

ヘルニア・腰痛・坐骨神経痛 朝起きる時の腰の痛みを改善するセルフケア&ストレッチ【川口陽海の腰痛改善教室 第26回】

水晶彫りの酒器|水晶のような小窓からのぞく美酒を愛でつつ一献

活用しないともったいない! 自治体独自のサービスや「ふるさと納税」で離れて暮らす親を見守ろう

活用しないともったいない「見守りサービス」! 「自治体独自の活動」や「ふるさと納税」で離れて暮らす親を見守る方法

獣医さんに聞く、なぜ秋にこそペットの健康診断なのか

獣医さんに聞く、なぜ秋にこそペットの健康診断が必要なのか?

現代人の3人に1人が孤独死しやすい?

現代人の3人に1人が可能性あり!孤独死しやすい人の共通点とは?

LINE公式アカウントでも記事を配信中

友だち追加

お気軽に友達追加してください

サライ本誌最新号(クリックで試し読み)

サライ7月号付録「筋トレチューブ」トレーニング動画公開中!

通販別冊『大人の逸品』最新号はこちら

ピックアップ記事

  1. 東寺
  2. 世界遺産の構成資産内にある旧五輪教会。傘を開いたようなコウモリ天井の下、イエスを抱いた聖ヨセフ(イエスの養父)が佇む。手前の聖体拝領台(柵)の意匠は大浦天主堂(長崎市・世界遺産)と共通。鳥の声と波の音が堂内にこだまする。

>>過去の記事へ

サライの通販

>>過去の記事へ

暮らし

【人生100年時代の生き方】「終活ってなんだ?」カメラマンが見続けた片品村のカヲルさん

取材・文/坂口鈴香
写真/高木あつ子
「終活ってなんだ?」カメラマンが見続けた片品村のカヲルさん|『人生はいーからかん』

群馬県片品村で農業を営む須藤カヲルさんは今年92歳。深くシワの刻まれた顔、曲がった腰と、どこにでもいるような農家のおばあさんだが、雑誌の人生相談回答者として、悩める女子を中心に人気を集めているという。夫婦や子育て、仕事に人づきあいなど、迷ったり困ったりしたときに心がラクになるカヲルさんの金言と日常をとらえた写真をまとめたのが、『人生はいーからかん』(カヲル組編、本体1500円+税、ヘウレーカ)だ。

書名の「いーからかん」とは、カヲルさんの口癖。「いい加減」という意味の方言で、ゆるゆるとこだわりのないさまをいう。編者・カヲル組の一人、カメラマンの高木あつ子さんに話を聞いた。

■「シワはな、人生の勲章だ。一生懸命生きてきた証さ」

人生相談の回答者としてカヲルさんを推薦したのが、カヲル組の瀬戸山美智子さんです。瀬戸山さんは20代で片品村に移住し、今はそこで家庭を持ち、炭アクセサリー作家として活動しています。私はいち読者としてカヲルさんの人生相談を愛読していたのですが、カヲルさんの痛快な回答を見るたびに、その源泉はどこにあるんだろう、もっと知りたいという思いが強くなり、写真を撮りはじめました。

そして、気がつくと10年が経っていました。

カヲルさんの夫、金次郎さんの葬儀の場面もカメラに収めています。最盛期には、村に200軒あった炭焼き農家も、今はカヲルさんの家1軒になっています。炭焼き名人といわれた夫の金次郎さんは、5年ほど前に亡くなりました。葬儀はまるで「金次郎さんの業績をたたえる会」のよう。皆淡々としていて、泣く人は誰もいませんでした。なかでも、カヲルさんの誇らしげな表情は印象的でした。

写真・高木あつ子

写真・高木あつ子

今、「林業女子」が注目されていますが、カヲルさんはまさに「元祖林業女子」。金次郎さんとともに、チェーンソーを持って山に入り、炭となる木を切っていました。ほかにも村の味噌づくりグループのリーダーとして、利益の配分やグループ作業の采配など、経営者としての才覚も発揮していました。

■「夢破れてどうしようもないときに、目の前に炭窯があった」

カヲルさんの人生は、平穏だったわけではありません。青春時代は戦争真っただ中だったし、最初の結婚では、出産の12日前に夫を交通事故で亡くし、子どもを婚家に置いて実家に戻っています。金次郎さんと再婚後は、国の農業政策に振り回され、天災に泣かされる……。もし私なら「時代が悪い」と怒りをぶつけるところかもしれませんが、すべてを飄々と受け入れ、働いてきたのがカヲルさんのすごいところです。

本の中に、「夢破れてどうしようもないときに、目の前に炭窯があった」という言葉があります。稲作も、養蚕もダメになり、家業を転換せざるを得なくなったカヲルさん。子どもを大学に進学させるときには牛を売ったそうです。私にも、大学受験に失敗して泣きながら新聞を見ていたら「これから受けられる大学、写真短大」という広告が飛び込んできたという経験があります。これが私にとっての写真のはじまりだったなと。こんなふうに自分の人生を「いーからかん」に振り返ることができるのが、この本のいいところだと思います。手前味噌ですが。

■「弱くなるのも自然現象さ」

カヲルさんを10年追って、「老い」に対する考え方は大きく変わりました。10年前、82歳だったカヲルさんに、私は「老い」を感じていました。腰が大きく曲がっても、生業があって、働くことで脳も動く。老いても仕事があることで、こんなに元気でいられるんだと思っていました。

でも、そのころのカヲルさんはまだ若かった。本当の「老い」ではなかったのです。味噌づくりも、金次郎さんの葬儀後も炭窯を見に行くほどだった炭焼きも、数年前に引退しています。92歳になったカヲルさんは、畑に行っても草をとるくらいしかできなくなりました。表紙の写真は、畑で寝てしまったカヲルさんです。まるで畑と一体化しているような姿は、ユーモラスで誰もがほっこりすると思いますが、これもカヲルさんがまだ畑仕事ができていたころのもの。80代の終わりでした。

カヲルさんの残り時間が確実に少なくなっているのを感じます。カヲルさんも家族も、明るく「いーからかん」に受け入れていますが、それもまた切ない。

でも私には、カヲルさんが何かすごいものを見せてくれているように思えます。日常の暮らしの中で、たとえ何もできなくなってもその存在自体に意味があるのではないか。カヲルさんには圧倒的な存在感があるんです。片品村という土地で、土とともに生きるとはそういうことではないかと思います。

カヲルさんを見てきて、自分はどんなおばあさんになるんだろう、自分に何ができるんだろうと考えるようになりました。田舎に移住し、田舎のおばあちゃんのようになりたいと憧れたこともありましたが、私にできるのは今まで続けてきたことを続けること――写真を撮り続けることだと気づいたんです。

カヲルさんから教わったのは、日々積み重ねることの大切さ。カヲルさんは「こうした方がいい」など、お説教じみたことは言いませんが、見ているだけでこちらの心の持ちようが変わる。大事なことに気づかせてくれるのです。写真にできるのも、カヲルさんが築いてきた土台がしっかりあるから。私にとって写真を撮ることは、自分の土台を固める作業でもあるのだと思っています。

高木あつ子さん談/高木あつ子さん
第一次産業周辺の撮影が得意なフォトグラファー。10年前の取材でカヲルさんと出会って以来、片品村に通ってカヲルさんの写真を撮り続ける。2017年には写真展「片品村のカヲルさん」を開催

 

『人生はいーからかん』(カヲル組編、本体1500円+税、ヘウレーカ)

『人生はいーからかん』(カヲル組編、本体1500円+税、ヘウレーカ)

取材・文/坂口鈴香
終の棲家や高齢の親と家族の関係などに関する記事を中心に執筆する“終活ライター”。訪問した施設は100か所以上。20年ほど前に親を呼び寄せ、母を見送った経験から、人生の終末期や家族の思いなどについて探求している。

この記事が気に入ったら
いいね ! しよう

Twitter で

関連記事

  1. 終活に関する調査|「終活」をする意向が最も高いのは30代。実際に始めたい年齢は「60代」 「財産整理」「エンディングノート」「墓じまい」|「終活」をする理…
  2. “終活”に関するアンケート調査 “終活”で1番心配なことは「物の整理、片付け」
  3. いつか訪れる配偶者との別れ|『没イチ パートナーを亡くしてからの…
  4. 備えあれば憂い無し!「リタイア後の落とし穴」にはまらないための4…
  5. 自分がいなくなった後が心配…。知っておきたい「愛するペット」の上…
PAGE TOP