娘が母親の再婚を後押し
マッチングアプリのプロフィールに“バツイチ”と記載はしたが、子どもがいることは書かなかった。自分自身を軽い女だと見せるためにそうしたと美紀さんはいう。
「プロフィールを偽ったのは、マッチングアプリにはどの程度危ない男性がいるのかを知るために、遊び相手としてリスクがないような女性を演出しないといけないと思ったからです。
私は40歳を超えていたのに、意外と相手から“いいね”をもらえたのには驚きましたね。その中で数人とやりとりをして、2人の男性と会いました。そのうちの1人の男性と仲良くなりました。危なそうに見えたのですが、実は真面目だったみたいです。会ってすぐに大きな子どもがいることは打ち明けていました。恋愛関係に進展しそうになったのは、その人ではなく、その人の友人です」
仲がいい異性がいる状態から、美紀さんは娘に対して罪悪感のようなものがあったという。その罪悪感から美紀さんの態度は不自然になり、その異変に娘はすぐに気付いていた。
「娘から見たら、私の態度が不自然だったこと、そして以前より綺麗になっていたと言われて、その男性のことを白状させられました。アプリを利用していたこともバレたのですが、始めたきっかけが娘のことが心配だったという理由だったことを伝えたら、笑われました。娘は『付き合ったら、会わせてね』と笑顔で言いました」
その男性とは、仲を深める時期に新型コロナが流行した時期が重なり、付き合うようになるまで時間はかかったが、その会えない時期が気持ちを高めたそう。そして、付き合ってから3年で昨年末に結婚。結婚には娘の後押しもあったという。
「コロナ禍のあの不安定な時期に連絡を取り合える相手がいたことに幸せを感じました。付き合うようになったときには娘に報告しました。娘も新しい彼氏ができたときに私に報告してくれて、そのときに『お母さんも内緒にしないでね』と伝えられたからです。
結婚は、娘が就職で他県に行くことが決まったタイミングで、就職のお祝いの席で言われました。私のパートナーに向かって『私がいなくなるとお母さんが心配だから、2人一緒に暮らしてほしいな』と。その発言が再婚のきっかけになりました」
娘が自立を考える上で、気がかりなのは母が1人になることだった。しかし、新しいパートナーと出会い、精神的な支えを得て生き生きと幸せそうに過ごす母の姿を見て、その心配は安堵に変わったのだろう。子どもでは支えきれない部分も、これからは新しい父親が母のそばにいてくれる。その事実が娘自身の安心感にもつながり、母の再婚を心から応援できる理由となっていった。
取材・文/ふじのあやこ
情報誌・スポーツ誌の出版社2社を経て、フリーのライター・編集者・ウェブデザイナーとなる。趣味はスポーツ観戦で、野球、アイスホッケー観戦などで全国を行脚している。










