母と彼氏は、娘の結婚と同じタイミングで入籍
兄の提案から、実際に会うことになったのは半年以上かかったという。会おうと思ったきっかけは、千尋さんが結婚を前提とした同棲を始めたことだった。
「その半年間、母親はその彼氏と同棲することもなく、ずっと1人で暮らしていました。私も22歳からずっと一人暮らしをしていて、34歳のときに結婚を前提で同棲を始めたのですが、母親は私に結婚したい相手がいることをとても喜んでくれたんです。そんな母親を見て、なぜ喜んであげられないのかなって。せめて相手がどんな人か会うくらいはするべきだと思うようになりました」
母親とその彼氏、千尋さんと婚約者の4人で会うことを提案したのは、千尋さんだった。母親の彼氏は、実際に会ってみるととてもいい人だったという。
「私と会うことにとても緊張していたみたいで、ロボットみたいにガチガチだったと思えば、気を遣いすぎてまくしたてるように話し始めたり。あまりに相手が緊張している様子だったので、私は冷静になることができました。
その場は食事だけで、後日に兄を含めて、母と彼氏との4人で会って、母親と一緒に暮らすことなどについて話し合いました。もちろん、反対はしていません。籍についても2人に任せると伝えました。相手の男性もバツイチでしたが、子どもはいなかったので」
母親と彼氏は、千尋さんが結婚する数か月前に入籍。千尋さんの結婚式には母親の隣で出席してもらったという。今は年に数回、母家族と兄家族と千尋さん家族が集まって食事をしている。千尋さんは一度も母親の再婚相手を「お父さん」とは呼んでいないし、今後も呼ぶことはないとのこと。しかし、「家族です」と笑顔で語る。
成人した子どもが、母親の再婚相手と親子のようになる必要はない。けれど、母親の幸せを願う同志として、互いに尊重し合える関係が大切になるだろう。
取材・文/ふじのあやこ
情報誌・スポーツ誌の出版社2社を経て、フリーのライター・編集者・ウェブデザイナーとなる。趣味はスポーツ観戦で、野球、アイスホッケー観戦などで全国を行脚している。
