
迂闊に人生を語り、昔の経験を口にすれば「老害」と揶揄される昨今。しかしながら、たとえ陰で「老害」と呼ばれようとも、申しておかなければならない「一言」はあるもの。さりとて、長々と諭してみたところで、相手の心に伝わるとは限りません。貴重な時間が、無駄になってしまうこともしばしば。
ならば、先人が残した言葉や金言を用いることで、あなたの真意や願いが相手に伝わる良案となるかもしれませんね。そんな時に役立つ言葉をご紹介いたしましょう。今回の座右の銘にしたい言葉は「共存共栄」 です。
目次
「共存共栄」の意味
「共存共栄」の由来
「共存共栄」を座右の銘としてスピーチするなら
最後に
「共存共栄」の意味
「共存共栄」について、『⼩学館デジタル⼤辞泉』では、「二つ以上のものが、争うことなく、ともに生き、ともに栄えること」とあります。この言葉には、「自分と他者が支え合い、ともに栄えてゆく」という深い意味が込められています。他者と比べるのではなく、それぞれの違いを認め、互いに助け合う、という姿勢こそ、これからのシニアの生き方には欠かせません。
「共存共栄」の由来
「きょうそんきょうえい」または「きょうぞんきょうえい」とも読みます。この言葉は、「共存」と「共栄」ふたつの熟語が合わさってできた言葉です。「共存」は共に生存すること、「共栄」は共に栄えることを表します。明確な起源は特定しづらいものですが、東洋思想における「和」や「調和」の概念と深く結びついています。
例えば、日本の代表的な経営者として多くの人に知られる松下幸之助氏は、「自然も人間社会も、共存共栄が本来の姿である」という考えを持ち、経営理念として「共存共栄」を掲げていました。彼は自社だけでなく社会全体の繁栄を通じての発展を求めて経営を行ないました。
また、近代日本の実業家、渋沢栄一が重んじた「道徳経済合一説」にも、この共存共栄の精神が生きているといえるでしょう。彼は、個人の利益追求だけでなく、社会全体の利益、すなわち「公益」を重視し、それが結果的に持続的な発展に繋がると説きました。
「共存共栄」を座右の銘としてスピーチするなら
「共存共栄」を座右の銘としてスピーチする際には、聞き手の心に響くよう、自身の具体的な体験談を交えましょう。決して上から目線ではなく、共に未来をよくしたいという謙虚な姿勢で語りかけることが大切です。以下に「共存共栄」を取り入れたスピーチの例をあげます。

「共に生きる大切さ」を感じさせるスピーチ例
私の座右の銘は「共存共栄」です。この言葉は、他者と共に生きることで互いに成長し合い、よりよい未来を築くという意味を持っています。
私自身、長い会社員生活の中で、さまざまな年代や立場の人たちと関わる機会がありました。その中で痛感したのは、一人でできることには限りがあるということです。あるとき、職場で大きなプロジェクトを任された際、若い同僚たちと意見が対立することがありました。しかし、思い切って彼らの意見に耳を傾け、互いの考えを尊重しあったところ、思いもよらない新しいアイデアが生まれ、成果を挙げることができたのです。
人生100年時代、自分と異なる考えや価値観にしなやかに向き合うことが、これからの私たちシニア世代には欠かせません。「共存共栄」を胸に、身近な人や地域、社会全体がともに幸せに歩んでいけるよう、これからも関わり続けていきたいと考えています。
最後に
変化の波が次々と押し寄せる現代。私たちは時に、先の見えない不安や、価値観の多様化による戸惑いを感じることがあります。しかし、そんな時代だからこそ、「共存共栄」という、互いを尊重し、共に支え合い、共に栄えていこうとするシンプルで力強いメッセージが、私たちの心の奥深くに響くのではないでしょうか。
●執筆/武田さゆり

国家資格キャリアコンサルタント。中学高校国語科教諭、学校図書館司書教諭。現役教員の傍ら、子どもたちが自分らしく生きるためのキャリア教育推進活動を行う。趣味はテニスと読書。
●構成/京都メディアライン・https://kyotomedialine.com
