「百折不撓」の読み方、意味、由来とは？｜人生100年時代を生き抜く羅針盤【座右の銘にしたい言葉】

人生も五十路の坂にさしかかる頃になりますと、それまでの人生を振り返る機会も多くなるものです。そんな時、己の半生を言い表す言葉を探してみるのも一興ではないでしょうか？　もしかすると、先人が残した言葉や名言の中に“言い得て妙”と思えるような言葉を見つけられるかもしれません。そして、その言葉からは、己が何を信条として生きてきたのかも見えてくるのではないでしょうか。

名前さえ知らなかった人物が残した言葉。その言葉が、自分が歩んだ人生と重なる“奇遇”を体験できるかも？　さて、今回の座右の銘にしたい言葉は「百折不撓（ひゃくせつふとう）」 です。

目次
「百折不撓」の意味
「百折不撓」の由来
「百折不撓」を座右の銘としてスピーチするなら
最後に

「百折不撓」の意味

「百折不撓」について、『⼩学館デジタル⼤辞泉』では、「何回失敗しても志をまげないこと」とあります。「百」は無数を意味し、「折」は挫折、「不」は否定、「撓」はくじけることを指します。直訳すると「幾度となく挫折してもくじけない」となります。この言葉は、心の強さや粘り強さを象徴しており、逆境や困難に対してあきらめずに立ち向かう姿勢を表しています。

「百折不撓」の由来

「百折不撓」の由来は、中国後漢時代の文人・蔡邕（さいよう）が記した「橋大尉碑（きょうたいいのひ）」にあります。この碑文は、同時代の政治家・橋玄（きょうげん）の不屈の精神を称えるために書かれました。

橋玄は、不正を厳しく取り締まり、民衆のために尽くしましたが、その正義感ゆえに権力者や悪人から恨みを買い、幾度も左遷や迫害を受けました。しかし、どんな困難にも屈せず、信念を貫き通しました。

蔡邕は、橋玄の揺るぎない精神に感銘を受け、「百折不撓、大節に臨みて奪うべからざるの風有り」と碑文に刻みました。これは、「百回折れても撓（たゆ）まず、大義のためには決して心を奪われない気風がある」という意味です。

蔡邕自身も権力争いに巻き込まれ、波乱の人生を送りましたが、橋玄の生き様を後世に伝えることにより、「百折不撓」の精神は現代まで受け継がれています。

「百折不撓」を座右の銘としてスピーチするなら

「百折不撓」をテーマにスピーチする際は、言葉の意味と自身の経験や価値観を結びつけることが重要です。この言葉は「何度失敗しても、心が折れず最後まで貫くこと」という意味ですが、単に精神論として話すと説得力が薄れます。具体的なエピソードや過去の挑戦とその結果を交えて話すことで、聴衆に共感を得られるでしょう。以下に「百折不撓」を取り入れたスピーチの例をあげます。

失敗から学びを得たスピーチ例

今日は、私の座右の銘である「百折不撓」という言葉についてお話しさせていただきます。「何度失敗してもくじけない心を持つこと」という意味です。人生には思った通りにいかない出来事が必ずあります。

私も過去に、多くの失敗を経験しました。その中で一番辛かったのは、起業初期に全ての資金を失い、周囲を失望させてしまったことです。しかし、そのとき、「ここで諦めたら全てが終わる」という強い思いが湧き上がりました。失敗を分析し、小さくても確実な一歩を踏み出すことで、小さな成功を重ねることができました。

百折不撓の精神は、ただ耐えるだけではありません。失敗から学び、成長することで前に進む力を得ることです。この言葉は、私たちの人生を支える大事なメッセージだと信じています。皆さんもぜひ、どんな困難にも折れない心を育んでください。

最後に

「百折不撓」という言葉は、単なる四字熟語にとどまりません。それは、人生をたくましく生き抜くための象徴です。座右の銘に取り入れることで、私たちはどんな試練に遭遇しても前に進む勇気を持つことができるでしょう。ぜひ、この言葉の精神を心に刻み、日々を力強く生きていきましょう。

●執筆／武田さゆり

国家資格キャリアコンサルタント。中学高校国語科教諭、学校図書館司書教諭。現役教員の傍ら、子どもたちが自分らしく生きるためのキャリア教育推進活動を行う。趣味はテニスと読書。

●構成／京都メディアライン・https://kyotomedialine.com