今の時代、サライ世代にとって「生きやすい世の中か? 」と問われたら、決して「生きやすい」とは答えられないように思います。それどころか、次第に「生き辛さ」が増しているようにも感じられます。

その理由の一つが、社会通念の変化ではないかと思うのです。それは、親や先輩、師と仰いだ人たちから指導を受け、身につけた「常識」が大きく変移しているからではないでしょうか? 別の言い方をするならば、社会を円滑に生きるための「世渡りの術」が、機能しなくなってしまった感じがいたします。

しかし、私たちが大きな変移と感じていることも、百年、二百年という単位で見れば、意外と小さな変化なのかもしれません。そのことは、今を生きる人々へ影響を与え続ける先人たちの名言や金言が物語っているように思います。

今回の座右の銘にしたい言葉は「損者三友(そんしゃさんゆう)」 です。

目次
「損者三友」の意味
「損者三友」の由来
「損者三友」を座右の銘としてスピーチするなら
最後に

「損者三友」の意味

「損者三友」について、『⼩学館デジタル⼤辞泉』では、「損者となる3種の友人。心の正しくない友、うわべはよいが誠実さのない友、口先だけで誠意のない友」とあります。つまり、交友関係において「損をもたらす三種類の友人」を意味します。

「損者三友」の由来

「損者三友」は、孔子が編纂した中国の古典『論語』の一節、「季氏篇」に登場する言葉です。

孔子日、益者三友、損者三友。友直、友諒、友多聞、益矣。友便辟、友善柔、友便佞、損矣。

【書き下し文】
孔子日わく、益者三友、損者三友。直きを友とし、諒を友とし、多聞を友とするは、益なり。便辟を友とし、善柔を友とし、便佞を友とするは、損なり。

【現代語訳】
孔先生はおっしゃった。交際して自分の益になる友人には三種類ある。損する友人は三種類ある。正直な人を友とし、誠実な人を友とし、見識の広い人を友とするのが益である。ひとに媚びる人を友とし、穏やかでごきげんをとる人を友とし、ことばが巧みでうわべだけの人を友とするのは損である。

この言葉は「避けるべき友」の特徴を示し、反対に「尊ぶべき友」がどんな人物かを教えているのです。孔子は、「友達には賢者もいれば、愚者もいる。その選び方が人生を左右する」という考えを説きました。「損者三友」は、避けるべき友として、以下の3つのタイプを挙げています。

1.便辟(べんぺき)
お世辞ばかりの人や、利を追求して近づいてくる偽善者。こうした人たちは、友人のように振る舞いながら、実際には害を及ぼします。

2.善柔(ぜんじゅう)
人にこびへつらう人。いわゆる「イエスマン」のことです。何でも賛同してくれる人は一見ありがたく見えるかもしれませんが、時としてあなたを間違った方向に導く原因となります。

3.便佞(べんねい)
言葉は美しいけれど、中身のない人。こういう人とは関わるほどに虚しさを覚えてしまいます。

これらの友人は、一見すると好意的に見えますが、実は私たちに悪影響を与え、成長を阻害する可能性があります。反対に「益者三友」として「有益な友」の特徴も同時に記されています。

1.直(ちょく)
正直な人。時には耳が痛いことも言いますが、あなたのために真実を伝える誠実さを持つ人。

2.諒(りょう)
信頼できる人。裏切らず、困った時に頼れる存在。

3.多聞(たぶん)
学ぶべきところがある人。経験や知識が豊かで、お手本となるような人。共にいるだけで成長できます。

「損者三友」を座右の銘としてスピーチするなら

スピーチで「損者三友」を座右の銘として語る際は、教訓的な印象になりすぎないよう注意が必要です。自身の経験を交え、共感を得られるように語りましょう。また、相手を批判するのではなく、よりよい人間関係を築くための指針として紹介することが重要です。以下に「損者三友」を取り入れたスピーチの例をあげます。

実りある人生を送るためのスピーチ例

皆さん、ご存じでしょうか。孔子の教えに「損者三友」という言葉があります。簡単にいえば、人生には避けるべき3つの友人タイプがいるという智慧です。それは、「調子を合わせるだけの人」「言葉だけ立派な人」「お世辞ばかりの人」。こうした人々は、一見親しみやすくても私たちを誤った道へ誘います。

一方で、正直で信頼できる友との関わりは人生を豊かにします。私はいつも真の友情とは何かを考え、誠実な人との繋がりを大切にするように心がけています。皆様も、この教えを参考に、信頼できる仲間と共に、実りある人生を歩んでいただければ幸いです。

最後に

「損者三友」は2000年以上前の教えでありながら、現代のシニア世代の人間関係においても深い意味を持ちます。人生の後半戦をより充実したものにするためには、表面的な関係や誠実さに欠ける交友を避け、本当の意味での理解と尊重に基づいた人間関係を築くことが大切です。

●執筆/武田さゆり

武田さゆり

国家資格キャリアコンサルタント。中学高校国語科教諭、学校図書館司書教諭。現役教員の傍ら、子どもたちが自分らしく生きるためのキャリア教育推進活動を行う。趣味はテニスと読書。

●構成/京都メディアライン・https://kyotomedialine.com

 

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