20人近くの男性とお見合いをさせた
娘を嫁にやらないと、とんでもないことになると思った幸三さんは、娘に見合いをさせる。
「見合いの時は、素直に行くんですよ。そしてたいがい、娘が帰ってくる前に、相手から断りの電話がかかってくる。娘は普通に一人の女性として見たら悪くないと思う。パーティでも見栄えがするし、英語はできるし、頭もいい。ただ、年齢が行き過ぎているけれど、まだ子供の望みもある。一通りの社交を仕込んでいるからどこにでも連れていける。妻としてはいいと思うんだけど、毎回、断られる」
最初は初婚の男性がいいと思っていたが、同世代の初婚男性には、問題があることが多かった。
「全く話さない人、自分の自慢ばかりする人、不潔な人……そんな人ばかりだったという。そこで、離婚歴がある年上の男性にした。20人目は55歳の男性だったんだけれど、その人からも断られた」
容姿もスぺックも優れている。娘が断られるのは、傲慢さと自己中心的な行動と性格だという。
「先日、娘を張り倒してやろうと思ったことがあったんです。それは、妻ががんの療養施設から一時的に帰ってきて、5日間ほど過ごしたんです。妻がソファで刺繡をしていると娘が帰ってきて“ママ! ママがいないから、皮を剥く果物が食べられなかったんだよ”と、りんごを差し出した。妻は“あらあら”と言いながら嬉々としてりんごを剥いている。一言怒鳴ってやろうかと思ったけれど、妻が困ってうろたえるからグッとこらえた」
幸三さんの友人の子供たちは、家庭を持ち、自分の子供たちの小学・中学校受験に家族一丸となって取り組んでいる。
「それなのに、ウチの娘は病気の母親に“りんごを剥いて”ですよ。小学生じゃないんだから。私がちょっと文句を言うと“パパの育て方が悪いんでしょ”とひとこと。仕事を促してみると“働かなくっていい、って言ったじゃない”と返してくる。ものには限度がありますからね」
頼みの綱は優秀な長男。先日、帰国した時に、娘のことを相談したという。
「そしたら“It doesn’t matter”(関係ないね)と笑っていた。“あいつを甘やかしたのは、父さんと母さんだよ”って。加えて、人材としてのニーズはなく、結婚相手として選ばれない現実を説明してくれた」
そして、長男は娘の“実際の姿”について教えてくれたという。
「まあ、薄々わかっていましたけど、ホストクラブにハマっているそうです。100万円単位でお金がなくなっていく。息子が娘のSNSを見せてくれたのですが、“推しのホストのトラック(宣伝トラック)を走らせる”みたいなことが書かれていました。ショックでしたが、何も言えない。たぶん、このままでは、私達の老後も危ない。今思えば、娘を月20万円の給料の会社でもいいから、働かせておけばよかった」
取材・文/沢木文
1976年東京都足立区生まれ。大学在学中よりファッション雑誌の編集に携わる。恋愛、結婚、出産などをテーマとした記事を担当。著書に『貧困女子のリアル』 『不倫女子のリアル』(ともに小学館新書)がある。連載に、 教育雑誌『みんなの教育技術』(小学館)、Webサイト『現代ビジネス』(講談社)、『Domani.jp』(小学館)などがある。『女性セブン』(小学館)などに寄稿している。