政府の広報活動のおかげか、令和の今、マイナンバーという言葉はほとんどの人が知っていると思います。マイナンバーの存在は知っていても、何に役立つものか、今一つピンとこないという人も多いのではないでしょうか。マイナンバー制度は、行政の効率化と国民の利便性を目的に作られた制度です。健康保険、雇用保険などの手続をする上で、マイナンバーは必須のものとなっています。

今回は、雇用される側と手続きする会社の側の両面から、マイナンバーについて人事・労務コンサルタントとして「働く人を支援する社労士」の小田啓子が解説していきます。

目次
失業給付を申請する際、マイナンバーが必要
マイナンバーがわからない場合どう対処する?
もし社員にマイナンバーの提出を拒否されたら
まとめ

失業給付を申請する際、マイナンバーが必要

雇用保険の給付の中で、最も多くの人に知られているのは、会社を辞めたあとの失業給付でしょう。離職後の失業給付は、いわゆる失業手当と呼ばれる基本手当、65歳以上の離職者を対象とした高年齢求職者給付金、再就職手当などいくつもの給付があります。これらの給付を受けるためには、ハローワークに行って求職の申し込みをしたうえで、失業の認定を受けなければなりません。この手続きの際には、離職票のほかにマイナンバーカードが必要になります。

マイナンバーカードを取得していない人は、個人番号通知書または個人番号の記載のある住民票などに加えて、運転免許証などの身元確認書類の提出を求められます。つまり、カードを持っているかどうかにかかわらず、マイナンバーは様々な手続きに必要なのです。マイナンバーの記載が必要なのは、失業給付に限ったことではありません。

雇用保険では、資格取得、喪失の届出のほか、育児休業や介護休業給付金の申請書、高年齢雇用継続給付金の申請書など、すべてマイナンバーの記載欄があり、記載して届け出ることが必須となっています。ただし、記載を要するようになったのは平成28年からですから、それ以前に会社に入社した人は、マイナンバーについて特に意識していなかったという人もいるかと思います。

そのような人は いざ退職することになったとき、マイナンバーがわからないということであわてる場合があるかもしれません。退職を考えている人は、離職後の手続きにはマイナンバーが必要であるということは、知っておくと良いでしょう。なお、マイナンバーカードを取得しておくと、ハローワークの手続きの際に、写真がいらないなどのメリットがあります。

マイナンバーがわからない場合どう対処する?

マイナンバー(個人番号)は、住民票を有するすべての国民に割り当てられた12桁の番号です。マイナンバーは平成27年より個人への通知が始まり、平成28年より制度の本格的な運用がスタートしました。当初は、通知カードを送ることにより、本人にマイナンバーを通知していましたが、令和2年5月より、通知カードは個人番号通知書に変更になっています。個人番号通知書は、そのままではマイナンバーの証明や本人確認には利用できません。

マイナンバーカードは本人確認書類になりますが、現在のところ交付申請は任意となっています。マイナンバーを日常で使う場面はあまりないので、自分のマイナンバーを暗記しているという人は少ないと思います。マイナンバーが必要になったとき、マイナンバーカードを持っていない場合は、通知カードや個人番号通知書を探して確認しなければなりません。

では、カードも取得しておらず、個人番号通知書も見つからないという場合はどうしたら良いのでしょうか? 個人番号通知書は再発行してもらうことができません。自宅の中で紛失した場合は自治体の窓口に、自宅外で紛失したという場合は警察に届け出ましょう。自分のマイナンバーがわからない場合は、マイナンバーカードの交付申請書を提出するか、個人番号の記載のある住民票の交付を受けることによって、確認することができます。

もし社員にマイナンバーの提出を拒否されたら

次はマイナンバーについて、雇用保険の手続きをする担当者の視点から見ていきます。従業員を雇用した時、被保険者の要件を満たす場合は資格取得の手続きが必要になります。資格取得届にはマイナンバーの記載をしなければなりません。

社員にマイナンバーの提出を求めて断られた場合は、どのように対処したら良いでしょうか? これが単にマイナンバーがわからないからという理由でしたら、個人番号通知書を探してもらうか、個人番号の記載のある住民票を取得してもらうように伝えます。なかなか提出してもらえない時は、雇用保険の加入にマイナンバーが必要であることを説明して、理解を得るようにしましょう。それでもなお、マイナンバーの提出を拒否する社員もいるかもしれません。

もともとマイナンバー制度は、一部に反対の声がある制度です。制度が信頼できないからマイナンバーを提出したくないと、社員が主張することもありえます。マイナンバーを強制的に提出させることはできません。実を言うと、マイナンバー法には、従業員にマイナンバーの提出を義務付ける規定はないのです。もちろん、提出を拒否しても罰則を受けることもありません。

けれども、マイナンバーがわからないと、記載欄が空欄のままになってしまい、困ってしまいますね。こういう場合でも、資格取得の手続きをすることは可能です。届出の備考欄に「本人事由によりマイナンバー届出不可」などと記載することによって、届出を受理してもらえるのです。ただし、これはあくまでもやむを得ない場合であり、厚生労働省のホームページやハローワークの資料などでも、マイナンバーの記載が必須となっています。

社員には極力、マイナンバーの提出について理解してもらうように努めましょう。もちろん、マイナンバーなどの個人情報の取り扱いには十分に注意すべきであることは、言うまでもありません。

まとめ

マイナンバー制度に対しては様々な意見があり、今までに情報流出などのトラブルも起こっています。現段階では、まだ十分に国民の信頼を得ているとは言えません。しかしながら、社会保険、納税などを含め、行政の世界ではマイナンバーは多くの手続きに利用されています。手続きを円滑に進めるためには、マイナンバーは必要なものであることは、認識しておくと良いでしょう。

●執筆/小田 啓子(おだ けいこ)

社会保険労務士。
大学卒業後、外食チェーン本部総務部および建設コンサルタント企業の管理部を経て、2022年に「小田社会保険労務士事務所」を開業。現在人事・労務コンサルタントとして企業のサポートをする傍ら、「年金とライフプランの相談」や「ハラスメント研修」などを実施し、「働く人を支援する社労士」として活動中。趣味は、美術鑑賞。

●構成/京都メディアライン・https://kyotomedialine.com

 

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