独居老人は不幸、孤独死は悲惨……、そんなイメージがあるかもしれませんが、老後の自由な時間をひとりで謳歌している人もたくさんいます。とはいえ、健康もお金も無限ではなく、不安が多いことも事実です。

遺品整理、生前整理などのプロである山村秀炯さんによると、老後のひとり暮らしを阻む壁は「お金」「健康」「心」「介護」「死後」の5つだとか。そして、この「壁」を上手に乗り越えられる人ほど、自分の生き方に納得していて、幸せに暮らしているそう。山村さんの著著『老後ひとり暮らしの壁 身近に頼る人がいない人のための解決策』(アスコム)では、山村さんが出会った“老後おひとり様”たちの具体例を挙げながら、立ちはだかる壁の対策法を解説しています。

夫や妻に先立たれたり、熟年離婚、こどもに頼る気はない……など、誰もが老後をひとりで暮らす可能性がある中、ぼんやりした不安を抱えている“老後おひとり様予備軍”にこそ、読んでいただきたい一冊です。「何かあったら、こうすればいい」とわかるだけで気が楽になるはずです。

今回は、「死後」の壁との向き合い方についてご紹介します。

文/山村秀炯

「適当にやってくれ」は遺族を困らせる

「あなたが亡くなった後のことを考えてみましょう」というと、「簡単だよ。葬儀なんかいらないから、灰にしてそのへんに撒いてくれればいい」という方がいるのですが、散骨もそんなに簡単ではありません。

まず、おひとりさまの場合、誰が灰にするのかという問題があります。人間の身体は水分を大量に含んでいますし、骨まできれいに燃やして灰にするためには専用の焼却炉が必要です。灰にするのにもお金がかかりますし、誰がその手続きをするのかという問題も残ります。また、散骨は法律違反ではないのですが、自治体によっては散骨できる場所を条例で規制していることがあるので、散骨したい場所の自治体への確認も必要です。ですから、葬儀やお墓はいらないといっても、それなりに手間とお金がかかるものなので、それをやってくれる方への事前の依頼とお礼が必要になります。

また住んでいた部屋、衣服や靴や電化製品や趣味のコレクションなど、残された遺品の片付けもあります。「ぜんぶ捨てていい」と言っても、遺品も大量になると、捨てるのにもお金がかかるのです。住んでいたのが賃貸物件であれば契約している不動産屋への連絡も必要ですし、役所にも死亡届を出す必要があります。おひとりさまの場合、それを誰にやってもらうかを事前に考えておく必要があります。死んでしまったらもう「自分にできることは何もない」状態になります。

れまで独立独歩で生きてきたおひとりさまも、老後から死後にかけては、必ず他人の助けを必要とするのですから、死後に他人に迷惑をかけないように、あらかじめ準備して、必要であれば死後の手続きや片付けを適当な人に依頼しておき、できればその人へのお礼や報酬も残しておきましょう。

あなたの財産は誰に相続されるのか

法定相続人について説明します。
誰に相続させるかは遺言によって指定できますが、遺言書がなかったり、遺言書に指定のない遺産があったりした場合には、民法で定められた「法定相続人」が自動的に相続人になります。法定相続人は亡くなった人の親族しかなることができません。そのため、親族以外に遺産を相続させたい場合には、遺言書の作成が必須となります。

また、法定相続人には優先順位があります。あなたに配偶者や子どもがいる場合には、その人たち全員が法定相続人になります。もし子どもが死亡している場合は、代わりに孫が代襲相続人になります。というわけで法定相続人は、まず配偶者と子どもなのですが、おひとりさまの場合にはそのどちらもいないこともあるでしょう。

配偶者も子どももいない場合は、健在である親あるいは祖父母が相続人になります。さらに親も祖父母もいない場合となると、今度は兄弟姉妹が相続人となり、亡くなっていれば甥や姪が代襲相続人になります。ややわかりにくいのですが、次のようになります。

配偶者は常に相続人となり、次の順位の人がいれば配偶者とともに相続人になる。
第1順位:直系卑属(子ども。亡くなっている場合は孫、ひ孫など)
第2順位:直系尊属(父母。亡くなっている場合は祖父母、曾祖父母など)
第3順位:兄弟姉妹(亡くなっている場合には甥や姪)

つまりどんなに親しくしていても、義父母、義理の兄弟姉妹、いとこ、叔父さん、叔母さんなどは法定相続人にはならず、遺言書で指定されない限り相続分はありません。ただし、被相続人の生前に介護や看護に尽力した親族は、要件を満たせば特別寄与料を相続人に請求できます。

また法定相続人がひとりもいないときには、同居していた内縁の配偶者など、被相続人と特別に親しくしていた人は、特別縁故者として遺産を相続できるようになりました。たとえば日常的に世話をしてきた内縁の妻などがいるなら、家庭裁判所に認められることで特別縁故者として相続できます。

*  *  *

山村秀炯(やまむら・しゅうけい)
株式会社GoodService代表。
愛知県を中心に遺品整理、生前整理などの事業を行う中で、ひとり暮らしシニアのさまざまな問題に直面。親族や友人に頼れない、頼りたくない「おひとりさま」という生き方を尊重し、なおかつ不安やトラブルなく生きていくためのサポート事業を新たに立ち上げる。東海テレビ「スイッチ!」、名古屋テレビ「UP!」など、メディアへの出演・取材協力も多数。

 

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