年金といえば、自分自身が年を取った際の老後の資金として老齢年金を思い浮かべる方が多いでしょう。しかし、年金には、家族の生計を維持されていた方が亡くなった時、残された家族に対して支給される遺族年金があります。

そこで今回は、日本クレアス税理士法人(https://j-creas.com)の税理士 中川義敬が、長年にわたる税理士業務を通じて得た知識や経験に基づき、遺族年金についてご説明いたします。

今回の記事では特に夫が先に亡くなって、妻が年金を受け取るケースについてご説明いたします。

目次
遺族年金とは?
配偶者は遺族年金をいつまでもらえる?
配偶者が受け取れる遺族年金の受給額を計算する方法は?
遺族年金が受けられない時はどうする?
まとめ

遺族年金とは?

遺族年金は、国民年金または厚生年金保険の被保険者、または被保険者であった方が亡くなったときに、その方によって生計を維持されていた遺族が、受けることができる年金です。

遺族年金には、「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」があります。亡くなった夫の妻は、国民年金の被保険者等であった夫が、受給要件を満たしている場合に遺族基礎年金を受け取ることが可能です。

また、厚生年金保険の被保険者等であった方が、受給要件を満たしている場合にも同様に、遺族厚生年金を受け取ることができます。

配偶者は遺族年金をいつまでもらえる?

配偶者の方が上述した「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」を受け取る場合、いつまでもらうことができるのか、それぞれご説明いたします。

遺族基礎年金

お子様が18歳になる年度の3月末まで、または障害等級1級または2級に該当する場合は20歳になるまで受け取ることが可能です。お子様が成長して、この期間を過ぎると遺族基礎年金の受給期間は終わります。ただし、お子様がいる場合でも、その方が結婚すれば、配偶者はその時点で遺族基礎年金はもらえなくなります。

遺族厚生年金

夫が亡くなったときにお子様がいる妻、もしくは30歳以上の妻の場合は亡くなった翌月から一生涯受給できます。一方、夫が亡くなったときに子がいない場合、並びに30歳未満の妻の場合は亡くなった翌月から5年間に限り受給が可能です。

配偶者が受け取れる遺族年金の受給額を計算する方法は?

それでは、配偶者の方が実際に受け取ることができる遺族年金の受給額について見ていきましょう。

1:遺族基礎年金の年金額(令和6年4月分から)

遺族基礎年金の年金額は、基本額に子の加算額を足して算出します。子の加算額は子の人数により変動しますが、ここで言う子とは「18歳到達年度の末日(3月31日)を経過していない子」または、「20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の子」です。

以下、基本額及び子の加算額を記載します。

(1)基本額 

昭和31年4月2日以後生まれの方:816,000円 

昭和31年4月1日以前生まれの方:813,700円

(2)子の加算額

1人目および2人目の子の加算額 各234,800円

3人目以降の子の加算額 各78,300円

子が1人~3人の場合に、妻の受給額(年額)がどうなるかを下表にまとめました(昭和31年4月2日以後生まれの方)。

なお、子がいない、または子が18歳以上(障害等級1級または2級の子の場合、20歳以上)になった妻は、遺族基礎年金を受け取れないのでご注意ください。

2:遺族厚生年金の年金額

遺族厚生年金の年金額は、死亡した方の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3の額となります。報酬比例部分は、年金の加入期間や過去の報酬等に応じて決まるもので、計算方法は次の通りです。

(1)(平均標準報酬月額 ※1 × 7.125/1000 ※3 × 平成15年3月までの加入月数 + 平均標準報酬額 ※2× 5.481/1000 ※3× 平成15年4月以降の加入月数)

(2)(平均標準報酬月額 ※1 ×  7.5/1000 ※3  × 平成15年3月以前の被保険者期間 + 平均標準報酬額 ※2× 5.769/1000 3 × 平成15年4月以後の被保険者期間)× 1.041 ※4

(1)と(2)で算出した金額のうち、大きいほうが報酬比例部分となります。

※1 平均標準報酬月額 = 平成15年3月以前の加入期間について、計算の基礎となる各月の標準報酬月額の総額を、平成15年3月以前の加入期間で割って得た額

※2 平均標準報酬月額 = 平成15年4月以降の加入期間について、計算の基礎となる各月の標準報酬月額と標準賞与額の総額を、平成15年4月以降の加入期間で割って得た額

※3 昭和21年4月1日以前に生まれた方については、給付乗率が異なります。

※4 昭和13年4月1日以前に生まれた方は1.043となります。

なお、報酬比例部分の計算において、厚生年金の被保険者期間が300月(25年)未満の場合は、300月とみなして計算します。

65歳以上で老齢厚生年金を受け取る権利がある方が、配偶者の死亡による遺族厚生年金を受け取るときは、「死亡した方の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3の額」と「死亡した方の老齢厚生年金の報酬比例部分の額の2分の1の額と自身の老齢厚生年金の額の2分の1の額を合算した額」を比較し、高い方の額が遺族厚生年金の額になるのです。

また、夫が亡くなったとき、40歳以上65歳未満で生計を同じくしている子がいない、または18歳未満の子(障害の状態にある場合は20歳に達した子)がいない妻の場合、65歳まで遺族厚生年金にプラスして612,000円(年額)が支給されます(中高齢寡婦加算)。

遺族年金が受けられない時はどうする?

妻は子が自立している場合や、子がいない場合は遺族年金を受けられません。しかし寡婦年金、死亡一時金のいずれか一方が受給できる可能性があります。

1:寡婦年金

死亡日の属する月の前月までの期間において、国民年金の第1号被保険者として保険料を納めた期間および国民年金の保険料免除期間が10年以上ある夫が亡くなったとき、その夫と10年以上継続して婚姻関係にあり、死亡当時にその夫に生計を維持されていた妻が60歳から65歳になるまでの間支給されます。なお、寡婦年金の額は、夫の第1号被保険者期間だけで計算した、老齢基礎年金額の4分の3の額です。

2:死亡一時金

死亡日の属する月の前月までにおいて、第1号被保険者として保険料を納めた月数が36月以上ある方が、老齢基礎年金・障害基礎年金を受けないまま亡くなったとき、その方によって生計を同じくしていた遺族に対して、保険料を納めた月数に応じて120,000円~320,000円が一時金として支給されます。

また、「寡婦年金」や「死亡一時金」の他にも、夫の死亡が労働災害(労災)であると認められた場合、労災保険による補償が受けられる場合があります。

まとめ

今回は夫が亡くなり残された妻が受け取る遺族年金の概要と支給額について紹介しました。遺族年金は「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」の2つに分かれます。しかし、受給される期限と受給額は異なりますので、ご自身は遺族年金をいくらもらえるのか一度確認してみてはいかがでしょうか。

●取材協力/中川 義敬(なかがわ よしたか)

日本クレアス税理士法人 執行役員 税理士
東証一部上場企業から中小企業・個人に至るまで、税務相談、税務申告対応、組織再編コンサルティング、相続・事業継承コンサルティング、経理アウトソーシング、決算早期化等、幅広い業務経験を有する。個々の状況に合わせた対応により「円滑な事業継承」、「争続にならない相続」のアドバイスをモットーとしており多くのクライアントから高い評価と信頼を得ている。

日本クレアス税理士法人(https://j-creas.com

構成・編集/松田慶子(京都メディアライン ・https://kyotomedialine.com

 

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