私たちは、生活していく中で加齢、障がい、死亡などのさまざまな要因より、生活していくことが困難となるリスクがあります。こうした生活上のリスクに備えるために支払っているのが年金の保険料です。また、加入している年金に応じて税制上の優遇があります。

そこで今回は、日本クレアス税理士法人(https://j-creas.com)の税理士 中川義敬が、長年にわたるサポートを通じて得た幅広い知識や経験に基づき、年金制度の種類や特徴についてお話しします。

目次
そもそも年金制度とは?
年金の種類とは?
公的年金とは?
私的年金とは?
受給される年金の種類は?
まとめ

そもそも年金制度とは?

私たちは貯蓄をしても、何歳まで生きるかは予測できないため、どれだけ貯蓄をすればよいのか分かりません。突然の事故や病気などで障がいを負ってしまうかもしれない、家計の担い手が小さな子どもと配偶者を残して亡くなるかもしれないなど、生活していくためには様々なリスクが考えられます。こうしたリスクに備えるため、制度化されたのが年金制度です。

年金の種類とは?

年金には、国が運営する「公的年金」があります。公的年金は、いま働いている世代が保険料を納め、その保険料を高齢者、障がいを負った方、遺族などへ年金として給付する、世代間での支え合いの仕組みとなっており、国民年金、厚生年金などが該当します。

さらに年金には上述の公的年金に加え、公的年金の上乗せ給付を保障するのが「私的年金」です。私的年金は、高齢期に豊かな生活を送るために重要な役割を果たしており、企業や個人がそれぞれのニーズに合ったものを選択して、任意で加入する仕組みになっています。

公的年金とは?

日本の公的年金は国民皆年金という特徴があり、20歳以上60歳未満の人が共通して加入する「国民年金」と会社員や公務員などが加入する「厚生年金」があります。また、国民年金は加入者を第一号被保険者、第二号被保険者、第三号被保険者に分類しています。

・第一号被保険者

第一号被保険者は、自営業やフリーランス、学生など、国民年金のみに加入している方で、毎月定額の保険料を自分で納めます。

・第二号被保険者

第二号被保険者は会社員や公務員など厚生年金に加入している方で、保険料は勤務先が納付し、保険料は労使と折半で負担します。

・第三号被保険者

第三号被保険者は専業主婦・夫など、第二号被保険者の被扶養配偶者で、配偶者加入の年金制度が保険料を負担するため、本人の負担はありません。

私的年金とは?

私的年金は企業が主体となって運営する「企業年金」と個人が任意で加入する「個人年金」があります。

企業年金には、確定給付企業年金(DB)、企業型確定拠出年金(企業型DC)などがあり、確定給付企業年金は、労使によりあらかじめ給付額が決まっています。そのため、年金を受け取る加入者は高齢期の生活設計などを立てやすいでしょう。しかし、資産の積立不足が発生した場合には、事業主が追加で掛金を拠出することが必要となります。

企業型確定拠出年金は、あらかじめ定められた掛金額と、その運用収益との合計額を基に個人別に給付額が決まり、企業が追加拠出をする必要は生じません。しかし、加入者自らが運用を行うことで給付額を確保し、高齢期の生活設計を立てる必要があります。

個人年金には、個人型確定拠出年金(iDeCo)などがあります。個人型確定拠出年金(iDeCo)は、国民年金加入者が個人で加入できる確定拠出年金です。60歳まで資金を動かせませんが、拠出、運用、給付のいずれにも税制上の優遇があります。

受給される年金の種類は?

公的年金には、高齢になったときに受け取る「老齢年金」だけでなく、障害を負ったときに受け取ることができる「障害年金」、家計の担い手が亡くなったときに遺族が受け取ることができる「遺族年金」があります。

(1)老齢年金

老齢年金は「老齢基礎年金」、「老齢厚生年金」に分類されます。

老齢基礎年金は、国民年金に10年間加入していた人が65歳から受けられる年金制度です。60歳からの繰上げ受給や65歳以降の繰下げ受給も選択することができ、保険料を納めた期間などに応じた額が受給されます。

老齢厚生年金は、厚生年金に加入していた人が受け取れる年金制度です。老齢基礎年金を受け取るときに上乗せされる形で、保険料を納付した期間や賃金(平均標準報酬額)に応じた額が受給されます。

(2)障害年金

障害年金には「障害基礎年金」と「障害厚生年金」があり、障害基礎年金は障害等級に応じた額を、障害厚生年金は賃金や厚生年金の加入期間、障害等級に応じた額が一定の要件を満たした者に対して受給されます。

(3)遺族年金

遺族年金は、「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」があり、一定の要件を満たした遺族が受け取ることが可能です。遺族基礎年金は残された配偶者に支給される場合、基礎年金額に子の人数に応じて加算した額が受給され、遺族厚生年金は亡くなった方の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3の額が受給されます。

公的年金には税制上の優遇があります。例えば、老齢年金を受け取ると所得税と住民税が課税されますが、受け取った年金の全額に対して課税されるのではなく、公的年金等控除額を差引いて残った額が課税の対象です。一方、障害年金と遺族年金を受け取った場合は、所得税、住民税ともに課税されません。さらに国民年金、厚生年金の保険料は社会保険料控除として所得控除の対象になるのです。

上記の公的年金に加え、それぞれが任意で加入した私的年金についても、それぞれの契約内容に応じて受給されることになります。また、私的年金にも税制上の優遇があります。例えば、個人型確定拠出年金の老齢給付金を年金として定期的に受け取る場合、公的年金と同様、公的年金等控除を差し引くことが可能です。

拠出する掛金については、小規模企業共済等掛金控除として所得控除の対象となり、また、確定拠出年金で生じた運用益に対しては非課税となります。

まとめ

今回は、年金の種類とその特徴についてご紹介しました。年金には国から受給を受ける公的年金と企業や個人が任意で加入する私的年金があります。

加入者の職業や年金を受けとる要因などによっても受け取ることができる年金が変わります。そのため、自分が受け取ることができる年金を把握し生活上のリスクに備えるとともに、税制上の優遇も受けることにより、メリットを活かしていくのが良いでしょう。

●取材協力/中川 義敬(なかがわ よしたか)

日本クレアス税理士法人 執行役員 税理士
東証一部上場企業から中小企業・個人に至るまで、税務相談、税務申告対応、組織再編コンサルティング、相続・事業継承コンサルティング、経理アウトソーシング、決算早期化等、幅広い業務経験を有する。個々の状況に合わせた対応により「円滑な事業継承」、「争続にならない相続」のアドバイスをモットーとしており多くのクライアントから高い評価と信頼を得ている。

日本クレアス税理士法人(https://j-creas.com

構成・編集/松田慶子(京都メディアライン ・https://kyotomedialine.com

 

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