ある発言から、父親の老後が不安になった
母親の彼氏と由香さんの関係は浅いまましばらくは続いたが、由香さんも結婚して子どもができたことで関係に変化があったという。
「相手の男性も母親に合わせていただけで、本人からはそこまで私と仲良くしたいという感じはしませんでした。だから仲良くはなっていかなかったものの、苦手意識も強くもならなかった。
出会った頃よりもやや警戒心が薄れたぐらいのときに、私は授かり婚をしたんです。本当に予定外だったこともあって、結婚や仕事の調整などで体調を崩してしまって。母親が付きっきりで世話をしてくれました。そのときに母親は免許を持っていなかったので、母の彼氏に送り迎えをしてもらったりするようになって、そこから仲が縮まっていきました。本当に悪阻などで切羽詰まった状態のときに警戒心なんて持っていられないですから。素でのやりとりをしている間に、なんだこんなにいい人だったんだって、母親の彼氏のことを思ったんです」
そこから母親と母親の彼氏、そして由香さん家族での交流が盛んになっていった。由香さんの父親とも孫ができてからは定期的に連絡を取り合っていたが、ただ居るだけの父親と世話をしてくれる母親とその彼氏とでは、由香さんが優先するのは必然と母親側だった。それを父親はよく思わなかったという。
「父親は孫を見ても触ることもなく、隣でニコニコしているだけ。泣き出すと私を呼ぶだけで何の役にも立ちません。それに対して文句を言えるような関係性でもなかったから、父と居ても私のストレスが増えていくだけだったんです。だから、子育てにも協力してくれてアドバイスもくれる母親を優先してしまっていました。
そしたら、父親が『あいつ(母親)は一人じゃないんだから放っておけばいいだろう』と発言したんです。この言葉って、母親よりも俺に構え、俺を一人にするなってことですよね。父の老後を想像して、ゾッとしてしまいました……」
熟年離婚に至る夫婦は妻のほうから離婚を切り出すことが多いという。夫の定年後に老後の面倒をみたくないといった理由もよく聞かれる。由香さんの母親は「このままずっと、死ぬまでこのまま(父親とだけの世界)なのが耐えられなかった」と言っていたという。熟年離婚した両親を持つ子どもはどのように別々になった親たちと接していけばいいのだろうか。離婚していない親よりも親からの依存度が高くなり、子離れ、親離れが難しいように感じた。
取材・文/ふじのあやこ
情報誌・スポーツ誌の出版社2社を経て、フリーのライター・編集者・ウェブデザイナーとなる。趣味はスポーツ観戦で、野球、アイスホッケー観戦などで全国を行脚している。