写真はイメージです

取材・文/沢木文

親は「普通に育てたつもりなのに」と考えていても、子どもは「親のせいで不幸になった」ととらえる親子が増えている。本連載では、ロストジェネレーション世代(1970~80年代前半生まれ)のロスジェネの子どもがいる親、もしくは当事者に話を伺い、 “8050問題” へつながる家族の貧困と親子問題の根幹を探っていく。

* * *

子供が学校に行かない「不登校」が社会問題になりつつある。2023年10月に文部科学省は「児童生徒の問題行動・不登校調査」の最新結果を発表。これは、文科省が学校現場の課題を把握するために実行している調査だ。

レポートによると、不登校の小中学生は過去最多の約29万9000人で、前年度比22.1%の大幅増となっている。うち専門機関に相談していない児童生徒も過去最多の約11万4000人。いじめは小中高などで約68万2000件が確認された。なかでも被害が深刻な「重大事態」は923件で、いずれも過去最多だった。

蓉子さん(72歳)は、「孫の不登校が理由で、ウチの娘は離婚したし、私の老後生活もガタガタ」と言う。

娘には教育もしつけも厳しくし、立派に育てた

蓉子さんには娘が2人いる。長女(44歳)のところに、14歳の女子がおり、次女(40歳)のところに、10歳の双子の男子と、5歳の女子がいる。

「問題なのは、お姉ちゃんのところの初孫。体格も頭もいいし、本当に自慢の孫娘なの。主人(75歳)に似て、勉強もできるから、誰もが羨む中高一貫校に合格したんですよ。滅多に喜ばない主人が“よくやったな”って、ポンと30万のお小遣いをあげたときは、びっくりしました。よっぽどうれしかったんでしょうね」

蓉子さんは25歳の時に、3歳上の夫と恋愛結婚をした。夫は最高学府を出てから民間企業に就職する。夫は苦労人で人当たりもいいから、トントン拍子に出世をし、役員まで上り詰める。現在はリタイアしているが、億単位の資産があるだろう。

「それがそうでもないのよ。まず、娘たちの教育費にお金をかけてしまった。姉妹で小学生から私立でしょ。当時はウチの実家に援助してもらいました。加えて、お姉ちゃんなんてアメリカに留学を2回もしている。学費が終わってホッとしたところで、義理の両親が離婚して、義母の生活費を払うことに。さらに今は義母の老人ホーム費用を月額15万円ずつ払っているからお金が入っても、キレイに出ていくの」

また、夫は金融関連の仕事をしていたために、投資は一切できなかった。

「名目上離婚して、妻名義で資産運用している人はけっこういたらしいんだけど、お金のために戸籍に傷をつけるなんてね……そういう感覚が主人にも私にも強くて、そこまではできなかった。まあ、すべきことはきちんとしようと、子育てをとにかくがんばったの」

娘たちを自立させれば、社会の役に立つだろうと、子育てに力を注いだ。

「まず、娘たちが小学生時代に海外赴任をしてもらい、国際感覚を育ててもらう。その後、私の母校である私立中高一貫校に入れて、できれば主人と同じ大学に進学してもらうという計画だったのよ。そのために厳しくしつけたし、しっかり教育をしたし、立派に育てたと今でも思っているの」

【姉は私立大学に進学、妹は高校中退……次のページに続きます】

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