「仕事を辞められないのはお前のせい」が母親の口癖

中学では給食からお弁当になったことで一週間に一度お金をもらえるようになり、千尋さんはお金のやりくりを頑張り、空腹な期間は脱することができた。中学以降で辛かったのは母親からの千尋さんの存在批判や愚痴。母親の気分によって態度が180度違ったという。

「母親が仕事から帰って来るのが嫌でしたね。母親の機嫌がいいときはほとんどなくて、悪いときのパターンが2つありました。1つはその怒りの矛先が私に向かい、私の存在を否定してくること。『お前がいなければもっと楽に暮らせた』、『金食い虫』とかですかね。もう1つは、怒りが私以外に向かっているものの、その愚痴を私は母親が満足するまで聞き続けないといけないことでした。主に仕事での嫌な人の話とかですね。これをちゃんと聞かないと、『お前のせいで仕事が辞められない』と怒りが私のほうに向かってきますから」

千尋さんの学校では中学卒業後に働く生徒はいなかった。担任の先生と千尋さんで何とか高校進学をお願いして、一番交通費がかからない家から近い高校に進学した。高校時代には母親には部活と嘘をついて必死でアルバイトをしてお金を貯めた。

「母親は私のためにお金を使うことが本当に嫌いみたいでした。『何歳まで面倒を見させるのか』とも言っていました。中学で働いたほうがいいのかなって思ったのですが、担任の先生が絶対に高校は行ったほうがいいと言ってくれて、一緒に母親を説得してくれたんです。

私にちゃんと関わり合ってくれた大人って、その担任の先生しかいないんです。母親が祖父母のことや他のきょうだいのことをまったく口にしないから、存在しているのかしていないのかも知りません」

高校のときのアルバイト先にそのまま就職。6歳上の男性と結婚して母親との縁は完全に切れたと思っていたが……。

~その2~に続きます】

取材・文/ふじのあやこ
情報誌・スポーツ誌の出版社2社を経て、フリーのライター・編集者・ウェブデザイナーとなる。趣味はスポーツ観戦で、野球、アイスホッケー観戦などで全国を行脚している。

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