取材・文/ふじのあやこ
昭和、平成、令和と時代が移り変わるのと同様に、家族のかたちも大家族から核家族へと変化してきている。本連載では、親との家族関係を経て、自分が家族を持つようになって感じたこと、親について思うことを語ってもらい、今の家族のかたちに迫る。
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SNSのアカウントを削除するなど、今までの人間関係を衝動的に断ってしまう「人間関係リセット症候群」という心理状態がまた注目を集めている。マーケティング・リサーチ会社のクロス・マーケティングが実施した「人間関係に関する調査」(実施日:2023年1月1日(日)、調査人数:全国47都道府県の20~69歳の男女1000人、インターネット調査)では、「人間関係をリセットした/したい人がいる」と回答したのは全体で37%、男女別を見ると男性は32%に対して、女性は42%と10%も高い数字となっている。
今回お話を伺った果歩さん(仮名・42歳)は、「今までのことをなかったことにすることで、新しい自分に生まれ変われると思っていました」と言い、人間関係をリセットすることを繰り返していた。
私は家族の余り物。食に走るしかなかった
果歩さんは愛知県出身で、両親と3歳上に姉、2歳下に妹のいる5人家族。果歩さんの家は父方の祖母と同居しており、母親はほぼ祖母の介護で付きっきり。しっかり者の姉が家の家事を手伝い、そんな姉にだけ妹は懐いていた。果歩さんは小さい頃から家族の中で孤立しているという思いがあったという。
「父親は仕事人間で、ほとんど家のことに干渉することはありませんでした。母親は祖母の世話で精一杯という感じで、その愚痴を聞くのは姉の役割。妹も学校のことなどで相談をするときには一番に姉を頼っていました。もちろん、私は家族から無視をされてはいないんですが、家族なのにみんなで食卓を囲むときなどは何を話したらいいのかわからなくて少し緊張していました。無言の時間を作るのが嫌で、無理にでも陽気なキャラを装って話したりしていましたね」
家族は果歩さんの変化に気づかない。果歩さんは家族の目を盗んで家にあるお菓子などを食べ漁るようになり、高校卒業時には70キロ前後の体重になっていた。
「家族が私が太っていることを気付いたのは65キロを超えたぐらい。身長が167センチあるので、標準体重の少しプラスぐらいでした。でも、70キロを超えると、ダボッとした服を着ても、体の厚みが隠し切れません。親や家族から指摘されるようになりました。みんな、体の心配よりも、みっともないという言い方でしたね。妹からボソッと『汚い体』と言われたことがあって、そこから今まで妹とは口を聞いていません」
【一度目の人間関係のリセットを行なったのは25歳のとき。次ページに続きます】