孫は「配信」でお金を稼いでいるらしいが
その後、コロナ禍が襲い、アイドルの活動は停止する。ステイホームの日々が続く中、もうひとつの心配が沸き上がってくる。
「当時孫は、ウチから500mくらいのところで、娘とその彼氏の3人暮らしをしていた。この彼氏が孫を溺愛しているんです。だから心配になってしまって、ウチに呼び寄せました」
孫は「すみちゃんの家、落ち着く」と言い、1日中スマホを見ていた。朝、澄恵さんが会社に行く時は眠っており、夕方帰宅するとスマホを見て、そのまま朝まで過ごしている。料理を作って置いていても「汚いから食べない」と、お菓子とコンビニご飯だけを食べる。
「グミキャンディが主食だと言っていました。一緒にいても、会話もせずにスマホばかり。本、ドリル、宿題なども一切開かず、スマホで動画を見ているんです。それから1年もしないうちに、娘が彼氏と別れて、ウチに戻って来た。やはり彼氏は孫が目当てだったんです」
娘に「彼氏とどこで会ったの?」と聞くと、バツイチ向けのマッチングアプリだと答えた。かつて取材したバツイチ女性が「あのアプリで会う男のほとんどが、子供の年齢と性別を聞いてくるの」と言っていたことを思い出した。彼女は、アプリで出会った男性とお互いに気持ちを確認したところで、「7歳の息子がいる」と教えた夜に、LINEをブロックされた経験を語っていた。
「その感じ、とてもよくわかる。女の子の母親は、一度あのキッズアイドルのライブを観に行った方がいいと思う。ホントに普通の大人の男性が、小学生に熱狂し、お金を払って抱っこをしていたんですから」
いま、澄恵さんは3人暮らしをしている。昼間の仕事に就こうとせず、夜の仕事やマッチングアプリで“食べさせてくれる男性”を探す娘と、中学校にときどきしか行かない孫娘だ。
「家賃の7万円は私、光熱費も食費も私。2人とも私に一切の感謝がない。娘は時々“すみちゃん、2万ちょうだい”などと言うんですが、孫は何も言ってこない。それなのに、通販で服や美容グッズがどんどん届くんです。娘に聞くと、配信(動画配信)で稼いでるから心配しないでと言われました」
澄恵さんは「自分一人の老後くらいは自分で面倒見る」とそれなりのお金を貯めていたが、この3年でずいぶん使い果たしてしまったという。
「娘を捨てた報いなのかもしれませんが、ホントにどうしようもない。娘と孫に甘すぎると恋人にも別れられてしまいましたし」
先日、娘にお金のことを言うと、「この間、じいさんが死んで、そろそろバアさんも死ぬだろう。あいつ(澄恵さんの元夫)が死ねば、あの東京の家と貯金が私のモノになるから、大丈夫だ」と答えた。
老子の格言に『授人以魚 不如授人以漁』がある。これは「飢えている人に魚を与えるか、魚の釣り方を教えるか」という意味だ。澄恵さんの娘と孫は、自らの美貌と若さを使えば、短時間で大金が稼げることを知っている。しかし、若さと美貌は目減りしていく資産だ。その資産に軸足を置いて回り続ければ、いつかは破綻する。
その破綻の後始末をするのは、母である澄恵さんなのか、それとも社会全体なのだろうか。
取材・文/沢木文
1976年東京都足立区生まれ。大学在学中よりファッション雑誌の編集に携わる。恋愛、結婚、出産などをテーマとした記事を担当。著書に『貧困女子のリアル』 『不倫女子のリアル』(ともに小学館新書)がある。連載に、 教育雑誌『みんなの教育技術』(小学館)、Webサイト『現代ビジネス』(講談社)、『Domani.jp』(小学館)などがある。『女性セブン』(小学館)などに寄稿している。