取材・文/沢木文

親は「普通に育てたつもりなのに」と考えていても、子どもは「親のせいで不幸になった」ととらえる親子が増えている。本連載では、ロストジェネレーション世代(1970~80年代前半生まれ)のロスジェネの子どもがいる親、もしくは当事者に話を伺い、 “8050問題” へつながる家族の貧困と親子問題の根幹を探っていく。

* * *

新型コロナウイルスが未知のウイルスだった3年前、感染拡大の場となると、多くの飲食店は休業に追い込まれた。政府や自治体は、休業補償のため、持続化給付金を支給。感染対策に協力し、閉店を続ければ東京都23区内の場合、個人経営のお店でも総額約700万円の協力金が支払われた。

怠け癖がある娘が、ますます怠けた

聡子さん(70歳・パート)は、娘(45歳)と孫娘(15歳)の将来を憂いている。それは、2人ともワガママで、享楽的だからだ。

「娘はなんの計画性もなく、実家や元夫に無心して生きている。主人が娘に“今のままではお前たちは破産するし、美音(孫)の学費も払えなくなる。資格を取るか仕事をしろ”と言うと、“私、バカだから資格も仕事も無理”と言うんです」

娘は実家からすでに600万円を借りている。東京23区郊外でスナックを経営しているという。新型コロナウイルスの対策がわかり、未知のウイルスではなくなった今、多くの飲食店には客足が戻り始めている。今が稼ぎ時ではないだろうか。

「それが、働かないんです。もともと怠け癖があったのですが、コロナのときに休んでいると給付金がもらえたじゃないですか。その額1日に4~6万円ですよ。娘の店はカウンター8席の小さな店で所有しているために家賃は不要。いわゆる“給付金バブル”状態になり、中途半端にしか働かなくなってしまったのです」

コロナ前まではある程度、客もついており、娘は毎晩20時から3時まで店を開けていたという。

「中途半端な娘にしては、よく頑張ったと思います。子供を食べさせていかなければならないから、それなりに必死だったんだと思いますよ」

ちなみに、給付金で実家への借金を返したのかというと、「そんなわけがないじゃないですか」と言う。娘の生い立ちを聞くと、幼い頃は勉強がよくできた。記憶力が異常によく、さほど努力しないのに高得点をマークしていた。

「主人も私も四大卒。主人は母校(難関大学)が大好き。今も車に大学のステッカーを貼っているんですよ。マグカップや名刺入れにも出身大学の校章が入っています。学祭の応援もよく行っていますしね。だから、我が子はそこにいれたいという強い思いがあった。だから“顔よりも頭がいい子がいい”とずっと言っていました」

娘は小学校高学年から神童ぶりを発揮。たいして勉強もしないのに、公立中学校ではトップの成績を維持。名門都立高校に進学すると、成績が急降下した。しかし、努力をすることができないので、常にビリから2番目。留年すれすれで進級し、“Fランク”と言われる大学に、やっとのことで入学したものの、すぐに中退。

「主人は諦めが早いので、“まあいいや”と。それから娘は美容師になりたいと言うので、専門学校に入れたんですがこれも中退。服飾系や建築系も興味があると言ったのですが、こっちも諦めているので、生返事。そのうちに、男と同棲を始め、夜の仕事をして、お金の味を覚えてしまったんです」

それから、25年間、正規の仕事に就いたことがないという。当時は就職氷河期でどの会社も採用を見送っていた。それに、世の中全体に「頑張るのは、カッコ悪い」という風潮も流れており、リュックを背負って世界を旅するバックパッカーや、さまざまなアルバイトを掛け持ちするフリーターも多かった。

「そういう子たちは、根性がある。娘は“問題を先送りしているうちに、誰かが助けてくれる”という甘えがあるんです」

【100万円のバッグを母親にプレゼントした背景……次のページに続きます】

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