父子のケンカをフォローできない
子どもと夫の関係に変化があったのは小学校6年生になったころ。友人たちにおかしいと言われたのか、夫と子どもが急に一緒にお風呂に入らなくなり、そこから仲が修復されることなくケンカ状態が続くことが増え、子どもの反抗が強くなると夫もヒートアップしていったという。
「夫から、子どもから『もう一緒に入らないと言われた』とショックを受けている感じで伝えられ、そこから夫と子どもの関係が変化していきました。前は夫が叱って子どもが少し言い返すぐらいだったのに、それがお互い譲らないことが増えて、ケンカも本格的なものになっていって……。そして夫が子どもに手を出すようになりました。頭を叩くとかではなく、タブレットを取り上げて、それを離さない子どもを突き飛ばす。他には、夫の怒声に子どもが耳を塞ぎ、その手を耳から離そうと子どもの体を押さえ込む。何度かそれを繰り返すと子どもが泣きながら部屋に籠ります。私はその後にお互いの話を聞きに行くんですが、どっちも何も話してくれなくて」
夫は怒りをセーブできないことに罪悪感があるのか、子どもを避けるように子どもとのケンカ後には近所にある義実家に避難するようになった。
「子どもはもう言い返すことはなく、怒られている時間は必死に耐えるという状態です。夫は冷静になるためにもその後に義実家に避難しています。子どもは怒っていない状態の夫に対しても口を開くことがなくなり、3人でいるときの空気も険悪です。
夫と子ども別々に話を聞くようにしているのですが、夫は『できない部分ばかり気になる』と言い、子どもは『高校を卒業するまでの我慢』と聞くことしかできません。お互いの気持ちを私が伝えても何も響いていないようなのです。特に私が夫に子どもの話をすると私たちの空気も悪くなり、夫婦の関係も少しずつ悪くなっています」
アンケートでは1位の「一旦その場を離れる」の意見として、「子育てのリアルは壮絶なので、紙に書くとか相手の立場で考える、なんて余裕はありません。その場を離れる以外の選択肢がありませんでした」「そこにいると、同じ感情から逃れられないから」などの声が上がっていた。
その場から離れるとの行動はアンガーマネジメント(怒りの感情を客観的に理解し、コントロールするためのスキル)の一種だとされる。しかし、その後に寄り添う時間がないことにより、子どもとの関係に亀裂が入ってしまっている。その寄り添う部分を遥香さんは頑張っているというが、それだけでは父子の関係の修復は難しいように感じた。
取材・文/ふじのあやこ
情報誌・スポーツ誌の出版社2社を経て、フリーのライター・編集者・ウェブデザイナーとなる。趣味はスポーツ観戦で、野球、アイスホッケー観戦などで全国を行脚している。