精神科医の和田秀樹さん(63歳)が高齢者の新たな可能性について綴った『シン・老人力』(www.shogakukan.co.jp/books/09389117)。読めば勇気と元気がわくと話題の同書から、高齢者がいつまでも若々しく自分らしく生きるために、「口グセ」にしてほしい言葉について、和田さんが紹介します。
文/和田秀樹
扇動的な情報には迎合しない
「頑固ジジイ」という悪口があるように、歳をとると頑固になってきます。前頭葉が老化してくるため、変化に対応できなくなるからです。
その一方で、テレビが発信する扇動的な情報や、自分が信奉している人の発言をうのみにしてしまう傾向が強くなってきます。
これは「曖昧さに耐える能力」が低下してきて、明快に決めつけられたほうが安心するからです。
やはりこれも前頭葉の老化が背景にあり、ものごとを複雑に捉える力が弱まっているゆえの変化です。
そのため、テレビのコメンテーターたちが断定的に正しそうなことや立派なことを言うと、ものすごく素直に「そうだったのか」と納得してしまうのです。
水戸黄門が印籠(いんろう)を出すと解決するような、単純な「勧善懲悪ドラマ」を好むようになるのはご愛敬ですが、占い師に頼って財産の管理まで任せてしまうようなケースも起こります。
思考の老化を防げる
コメンテーターなどの歯切れのいい物言いに、すぐに「そうだったのか」と納得してしまうのは思考が老化している証拠です。
ヘンだと思うことには「そんなはずはないだろう!」とツッコミを入れ、自分なりに考える習慣をもつべきです。
思考の老化を防ぐ効果的なトレーニングにもなります。
何にでもケチをつけろという意味ではありません。
テレビの情報番組にありがちな決めつけを、漫才のボケのセリフとして捉えて、
「それは言い過ぎだろう」
「例外があるはずだ」
などとツッコミを入れるわけです。
疑問を抱くだけでも十分ですが、「こうかもしれない」「あんなふうにも考えられる」と考えられるようになれば、さらに思考の老化を防ぐことができます。
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和田秀樹(わだ・ひでき)
精神科医。1960年、大阪府生まれ。東京大学医学部卒業。東京大学医学部附属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガー精神医学校国際フェローを経て、現在は川崎幸病院精神科顧問、ルネクリニック東京院院長などを務める。高齢者専門の精神科医として、30年以上にわたって高齢者医療の現場に携わっている。著書に『80歳の壁』『70歳が老化の分かれ道』など多数。