「孫がしんどい」という義母に気持ちを救われた
そこから順調に付き合いは続き、1年後にはプロポーズを受ける。そのとき朱里さんの年齢は39歳だった。そして相手は33歳。子どもへの不安を正直に話し、一度はプロポーズを断ったという。
しかし、結婚の挨拶と関係なく彼の両親に会い、再度話し合いをして結婚を決意するに至った。
「数年付き合って終わるんだろうなって思っていたから、1年でプロポーズをしてくれたときには真剣に考えてくれているんだとわかり、嬉しかったです。でも、受ける気はありませんでした。まだ、結婚=子どもという呪縛が解けてなかったんですよね。
解けたきっかけは夫の義両親に会ったこと。6つも年上の私を見ても何も言わなかったし、夫には姉がいるんですが、そこの孫が4人いるみたいで面倒を頼まれ続けて孫疲れがあるようでした。そこからしばらくしてコロナ禍に入ったのでまだかなってはいませんが、義母は『お父さんとゆっくり色んな国に旅行に行きたい』と語っていました。
初対面でこんなことを語られても困ってしまう内容だったんですけど、なんだかホッとしてしまって。変な話ですが、結婚を決意したのは義両親の孫に対して愚痴る姿があったからかもしれません」
40歳になる少し前に朱里さんは入籍。子どもには恵まれてはいないが夫婦2人で今も幸せな生活を送っているという。義両親との交流も最小限でまったくと言っていいほど干渉はなし。義両親は年末年始やお盆などの大型連休は夫婦水入らずで旅行に出かけており、親族付き合いもないとのこと。
「義両親は近くに暮らす義姉の孫の世話を押しつけられないように逃げているみたいです。私とは特に距離が近くなっていないので直接聞いたわけではなく、義姉から夫に孫の面倒を頼めないかと連絡があるので知ったという感じです。もちろん夫は断ってくれていて、今なんて義母と団結して徹底的に断ってやろうとしているみたいです(苦笑)。
孫って全員がかわいいわけじゃないんですね。そんな人は周囲にいなかったから義姉には申し訳ないけれど、少し心が軽くなりました」
本人たちが子どもを望んでいない場合や、望んでも授からなかった場合などの状況を知ろうともせずに、周囲は「子どもがいたほうがいい」という勝手な理想を押しつけてくることも多い。他人なら避けることも可能だが、親族からとなると無下にすることはできず、そのストレスは計り知れない。
たとえ1人授かったとしてもそこから「2人目は?」、「兄弟がいたほうがいい」という価値観の押しつけが始まるという。子どもを作るかどうかは夫婦の意志でいいはず。無意識に口にしてしまう前に、その思い込みにすぎない“当たり前”に疑問を持ってほしいものだ。
取材・文/ふじのあやこ
情報誌・スポーツ誌の出版社2社を経て、フリーのライター・編集者・ウェブデザイナーとなる。趣味はスポーツ観戦で、野球、アイスホッケー観戦などで全国を行脚している。