「あまりに作りが甘いので、捨てた」

波奈さんは、自分の仕事の履歴をFacebookに上げている。

「私が勤務するIT関連会社は、ウェブマーケティングが強み。私はブランディングの仕事をしており、お手伝いした企業に許可を得て、私が手がけた仕事を上げています。貴和子さんは私がアップしたある企業の投稿に対し、“この会社の製品を買ったけど、あまりにも作りが甘く、デザインもイマイチ。高いわりに安っぽく、持ち続けると危険なので捨てました”と書き込んだんです」

Facebookの特徴は、反応がなくても意外と読まれているということ。いいね! も何もしないが、読んでいる人は多い。そして、コメントをつける人の“質”で、相手の背景を推し量るようなところもある。Facebookは“つながりの質”を品定めする場でもあるのだ。

波奈さんはそのクライアントから信頼を得ている。Facebookの友人の中には著名人も多く、質がいい。そこを見られていることも含み済みだ。だから、貴和子さんの投稿は目立ち、空気を乱す。それゆえにあわててその投稿を非表示にした。

「貴和子さんの世代は、批判することがその人のためになると思っている。でも、今は批判は嫌われる。SNSは特にそうなんですよ。だれも批判など求めていない。貴和子さんはそれが全くわかっていない」

貴和子さんにSNSのマナーを教える人はおらず、空気も読めない。誰かがレストランの記念日ディナーを上げれば、「シェフが変わって味が落ちた。今度はこのレストランに行きなさい」と書き込み、ジビエを食べたという人の投稿には、「猟友会に友人がいるので、私はジビエをもらっています。店では食べないし、買ったことがない」とコメントする。

「もう、付き合えないと思いました。実際に会っていると本当に素敵なお姉さまだったのに、まさかこんな人だとは思わなかった」

さらに驚いたことがあった。貴和子さんは「主人と死別した」と言っていたが、実際は離婚したのだった。

「友人の離婚報告の投稿に、自分が慰謝料を得て離婚するコツを書いていたんです。何の見栄のためなのか、私にウソをついていたんです」

SNSはその人の本性を浮き彫りにする。貴和子さんは波奈さんの友人男性の中でも、容姿と社会的地位が優れている人に、食事に誘っていた。

「その誘う相手が、またバカばっかりで……中には貴和子さんと男女の関係を持った人もいたみたいです。憧れのお姉さまは、マウンティングお化けで、好色な女性だった」

SNSはその人の「素」が現れる。そのことを踏まえて、うまく付き合いたいものだが、なかなかそれは難しそうだ。

取材・文/沢木文
1976年東京都足立区生まれ。大学在学中よりファッション雑誌の編集に携わる。恋愛、結婚、出産などをテーマとした記事を担当。著書に『貧困女子のリアル』 『不倫女子のリアル』(ともに小学館新書)、『沼にはまる人々』(ポプラ社)がある。連載に、 教育雑誌『みんなの教育技術』(小学館)、Webサイト『現代ビジネス』(講談社)、『Domani.jp』(小学館)などがある。『女性セブン』(小学館)などにも寄稿している。

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