結婚30年目にモラハラで離婚した友達
コロナの合間の自粛解除のときに、学生時代から仲が良く、コロナ前まで定期的に会っていた仲良し4人組と会うことになった。
「名目は私を励ます会でした。私たち夫婦が仲いいことを知っているので、気落ちしているだろうからってリーダー格の子が開催してくれたのです」
会場は23区郊外にあるカジュアルなイタリアンレストラン。どれだけ飲み食いしても1万円程度の店だ。そこに、後に同居する桜さんも来ていた。
「安いからいろんなものを食べ、くっちゃべっているのに、桜だけワイン1杯しか飲んでいない。私が“もっと飲みなよ”と言うと、“いや~、私、手持ちがないんだよね。でもみんなに会いたかったから来たの”と言うんです」
桜さんの夫がモラハラであることはみんなが知っていた。経済DVを加え、生活費を渡さないことは多々あり、そのせいで子供も作らなかったことも皆が知っていた。だから「ここは私たちがおごるから」と総額を3人で割ることにし、楽しく飲み、解散になった。
「いつものように駅で“バイバイ”って別れたときに、桜が私にくっついてくる。“ちょっといいかな”と言うので、喫茶店に入ろうとしたんです。でも、コロナの営業自粛でどこも開いていない。飲み足りなかったこともあり、“ウチで飲む?”と誘ったんです」
桜さんは須賀子さんの家に入ると、夫の位牌と遺影に手を合わせた。
「ウチにあった日本酒を飲みながら話をしていたのですが、桜は一向に帰らない。いつもなら桜のご主人から嵐のように電話があるのに、それもない。不審に思って聞くと“離婚したんだよね”と言う。ステイホーム時にモラハラが高じて、暴力まで振るわれて、逃げるように離婚したのだと言っていました」
桜さんには子供もおらず、実家ともいい関係ではない。桜さんは家を出て、これまでの貯金150万円程度のお金を元手に自活することにした。
「離婚から半年以上、家賃5万円のアパートに住み、パートで生計を立てていたそうですが、コロナで勤務時間が減らされたり、適応障害になったりして、家賃も滞納しそうだとのこと。生活保護も門前払いされ、“このままではホームレスになる”と言うので、“ウチに住めば? 部屋も余っているし”と言ったんです。実際に、私もさみしかったので、気心知れた桜と住むのは、いいと思ったんです」
誰かが家にいれば、急病などもしものときに安心だ。それに誰かが家にいる安心感は何物にも代えがたい、とその時は思ったのだった。
【湯をたたえた湯船に浸かり、お気に入りの食器を割る……その2に続きます】
取材・文/沢木文
1976年東京都足立区生まれ。大学在学中よりファッション雑誌の編集に携わる。恋愛、結婚、出産などをテーマとした記事を担当。著書に『貧困女子のリアル』 『不倫女子のリアル』(ともに小学館新書)がある。連載に、 教育雑誌『みんなの教育技術』(小学館)、Webサイト『現代ビジネス』(講談社)、『Domani.jp』(小学館)などがある。『女性セブン』(小学館)、『週刊朝日』(朝日新聞出版)などに寄稿している。