親友・依子の結婚式に両親は来なかった
同居が解消になったのは、物件の取り壊しが決まったこと。
「それ以前に、依子が彼氏を連れ込んだことが何度もあったから。私、恋愛も男性も嫌いなんです。でも依子はそうではない。たびたび彼氏を連れ込み、私は“やめてよ”と言う。すると、“結子は潔癖で男嫌いで、完璧主義”と言い返してくる。それでも私は依子が大好きだった」
26歳のときに、長かった青春は終わる。
「私は“そろそろ定職に就かないとヤバい”と思い、遅い就職活動を開始。50社から門前払いされて、今のIT関連会社に採用されました。当時の私は、未経験、高卒、PCも使えない26歳の元フリーター。でもガッツがあったから、拾ってもらえたんだと思います」
親友・依子さんは同棲解消後、当時の彼と結婚をした。相手の男性は当時、非正規雇用の警備員だった。
「彼の実家は建築会社を経営しつつ、親族に市議がいる地元密着の名家。だから、地元の結婚式場で盛大な披露宴をしたんです。招待客は60人で、相手の実家側の人々が55人。依子側は私と高校時代の恩師2名とソフトボールの後輩のみ。私は友人代表としてスピーチをしました。依子の両親は来ていませんでした」
親子関係の確執は根深い。結子さんは「親に会ったら昔に引き戻される。絶対に縁を切れ」とアドバイスをし続けたという。
「私は独身のまま働き続けました。依子の夫は親の跡を継ぎ、依子は専業主婦になったのですが、なかなか子供が授からなかった。私も高卒で男尊女卑社会で働き、依子も嫁業をがんばっていた。苦しい時期が重なっており、結婚後も頻繁に会っていました。依子が不妊治療の果てにやっと息子を授かったときは嬉しかった」
立場が全く違うから、お互いを素直に喜び合える。
「私の勤務先の社員が100人になったとき、私がリーダー(係長)、プロデューサー(課長)、チーフプロデューサー(部長)と昇格した度にお祝いをしてくれました。依子は親友……というか伴侶のような不思議な存在。依子の結婚、出産、息子君の成長も心から嬉しかったで。でも、問題がある家庭で育った依子に、子育ては難しかったみたいです」
【息子は6年間、不登校をしていた……その2に続きます】
取材・文/沢木文
1976年東京都足立区生まれ。大学在学中よりファッション雑誌の編集に携わる。恋愛、結婚、出産などをテーマとした記事を担当。著書に『貧困女子のリアル』 『不倫女子のリアル』(ともに小学館新書)がある。連載に、 教育雑誌『みんなの教育技術』(小学館)、Webサイト『現代ビジネス』(講談社)、『Domani.jp』(小学館)などがある。『女性セブン』(小学館)、『週刊朝日』(朝日新聞出版)などに寄稿している。