関係が近いからこそ、実態が見えなくなる家族の問題。親は高齢化し、子や孫は成長して何らかの闇を抱えていく。愛憎が交差する関係だからこそ、核心が見えない。探偵・山村佳子は「ここ数年、熟年夫婦、そして我が子や孫を対象とした調査が激増しています」と語る。この連載では、探偵調査でわかった「家族の真実」について、紹介していく。

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今回の依頼者は俊夫さん(62歳)です。IT関連会社を経営していましたが、コロナを機に会長職に引退。複数の会社の顧問している多忙な男性です。

私たちは俊夫さんからここ5年くらいの間に、何度も依頼をいただいています。調べているのは、役員候補の幹部社員の素行。今回も素行調査だと思っていましたが、いつもより表情が深刻です。

「妻を調べてほしいんです」

俊夫さんはデニムにTシャツのコーディネートを好んでします。豊かな銀髪に引き締まった体をしており、いつも自信にあふれているのに、この日はショックでうろたえている様子がわかりました。

話し出すのを待っていると、「実は、妻のことなんです」と絞り出すように口にします。俊夫さんは女性にもモテて、それなりに奔放な生活を送っているご様子。ゆえに、てっきり独身かと思っていたので、妻がいることに驚きました。

「妻とは結婚28年になります。彼女が25歳、僕が37歳のときに籍を入れました。妻は控えめな人で、“いかにも大和撫子”というタイプ。昭和どころか、明治時代の令嬢というような雰囲気で、自分の意見をあまり言わず、口数も少なく、静かに微笑んでいるところが気に入りました」

俊夫さんは10代後半に単身渡米し、古着の輸入販売の仕事のほか、さまざまな仕事をしながら、今の会社を維持しています。かなり危ない目にも遭い、どん底に落ちてから這い上がるなど、アップダウンが激しい人生を送っていました。

「妻と出会うまでは、それなりに華やかな女性との交際をしていました。モデル、アーティスト、経営者……いろんな女性がいましたね。それも楽しかったのですが、根無し草みたいで虚しさを覚えることもありました。そんなとき、妻に出会い“この人が家にいて待っていてくれるなら、俺はもっと頑張れる”と思って結婚を申し込んだのです」

しかし、俊夫さんはモテる。海外出張も多い。家庭のことはほとんど妻任せにしていた。

「僕は家庭が欲しかったので、妻には仕事を辞めてもらいました。すぐに子供も作って、娘が生まれたのですが、その頃は会社を立ち上げたばかりで忙殺されていたのです。でもそれで妻と娘には裕福な生活をさせてあげることができました」

家族の思い出について伺うと、「思い出はありませんが、いい暮らしはさせました」と即答。

「娘が生まれるときも海外にいましたし、学校の行事などもすべて妻に任せていました。僕は男が育児に口を出さない方がいいと思うんですよ。父親が余計なくちばしを挟むと、意見の食い違いが生まれますから」

【妻がオシャレをして家から出ていく……次のページに続きます】

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