関係が近いからこそ、実態が見えなくなる家族の問題。親は高齢化し、子や孫は成長して何らかの闇を抱えていく。愛憎が交差する関係だからこそ、核心が見えない。探偵・山村佳子は「ここ数年、熟年夫婦、そして我が子や孫を対象とした調査が激増しています」と語る。この連載では、探偵調査でわかった「家族の真実」について、紹介していく。

昨今、夫婦の“出会い方”が変わっている。かつては同僚、学校、習い事、見合いなどが多かったが、現在はネットが台頭している。国立社会保障・人口問題研究所が1940年から約5年おきに行う『出生動向基本調査』がある。2022年9月に発表された最新データを見ると、夫婦の出会いの項目に「マッチングアプリやインターネット交流サービス」が新たに加わり、13.6%(約7組に1組)が“ネットで出会って婚”していることが報道された。

男女が出会うことを目的としたマッチングアプリ。日本最大と言われており、約1500万人の登録者がいるという『ペアーズ』のリリースは2012年。それから10年、40代以上の男女にもマッチングアプリは広がっている。

今回の依頼者は、横浜市に住む美佳さん(54歳)も、マッチングアプリで夫(64歳)と知り合い、入籍して半年になるという。アプリは条件で相手を選別できるのが特徴だ。美佳さんは「家があり、高収入な男性」を、夫は「10歳以上年下の身長155㎝以下のぽっちゃり体型の女性」を求めていた。

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元医者の妻は「横浜に家がある人」を条件に、52歳から婚活をスタート

美佳さんは優しい印象のふっくら体型の女性です。趣味は料理とお花ということからも、家庭的な雰囲気が伝わってきます。ふんわりしたシルエットの白いブラウスと紺のパンツに、横浜の地元ブランドの赤いショルダーバッグを合わせていました。

「私は海がない県に生まれて、52歳まで過ごしてきたんです。若い頃から横浜に憧れがあって、前の主人と離婚した後、こちらに引っ越してきました」

22歳で結婚し、離婚するまで約30年間を共に歩んできた前の夫との間には成人した娘がいますが、音信不通だと言います。

「前の主人は見合い結婚でした。地元では人格者として有名な医者なんですけれど、私に対しては最低な態度を続けていました。何かを話しかければ、“うるせえ、ブタ”としか返事をしないんです。ひどいでしょう。これが序の口ですからね。もっといろんなことを言われましたよ。専業主婦で何のとりえもない私のことを、娘も徹底的にバカにした。四面楚歌の環境で、過ごしてきたのです」

生活費はふんだんに与えられていたので、家から逃げるように東京に遊びに来ていたそうです。観劇仲間に夫の言動について愚痴をこぼしたら「あなた、それモラハラよ」と離婚をすすめてくれたそうです。

「毎日録音して、弁護士さんに密かに送っていました。また、主人には複数の愛人もいたので、自分でその写真を撮って、離婚の交渉をしました。主人は大慌てでしたよ。“飼い犬に手をかまれるとはこのことだ”とテーブルをひっくり返しましたからね。そこも私は撮影したんです。そういうモラハラのことが外に出ると大変だということで、まとまった慰謝料を得ました」

離婚後、そのお金を持って、憧れの街・横浜に出てきたそうです。

「友達の紹介をもらい、介護施設の職員として働き始めました。慰謝料で憧れの横浜に家を買おうと思ったのですが、とても手が届かない。生活費がかかるのに収入は少なく、女一人で生きていくことに不安を覚え、“今度は素敵な人と結婚しよう”と、婚活をすることにしたのです」

美佳さんが結婚相手の条件として設定した条件は“横浜に家を持っていること”。

「シニア向け婚活パーティに参加して、“横浜市に家を持っている人”を中心に選びましたが、お金がある人は少ないんです。そこで友人(48歳)からマッチングアプリをすすめられて登録。家があることと、年収500万円以上ならだれでもいいかなと思ったのですが、登録するとすぐにたくさんの“いいね”が来ました」

美佳さんが登録したのは、バツイチ向けのマッチングアプリ。中には30代の男性からの求愛もあったと言います。

「そこで今の主人と出会ったんです。見た目はそうでもないのですが、会社の経営をしているので、お金があるんです。自宅は横浜市内にあるところも条件にぴったり。彼も私を気に入ってくれて、デートには真っ赤なスポーツカーで来てくれました。夜景を観て、ドライブして、シティホテルを予約してくれて、その日のうちに男女の仲になったのです」

【結婚を焦って押しかけ女房……次のページに続きます】

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