関係が近いからこそ、実態が見えなくなる家族の問題。親は高齢化し、子や孫は成長して何らかの闇を抱えていく。愛憎が交差する関係だからこそ、核心が見えない。探偵・山村佳子は「ここ数年、熟年夫婦、そして我が子や孫を対象とした調査が激増しています」と語る。この連載では、探偵調査でわかった「家族の真実」について、紹介していく。
2022年に内閣府が発表した『男女共同参画白書』をみると、働く女性が増え続けていることがわかる。「男性雇用者と無業の妻から成る世帯」は1985(昭和60)年は936万世帯だったが、2021年には458万世帯に半減。
一方で、「男性雇用者の共働き世帯」は増えた。1985(昭和60)年は718万世帯だった。これが、2021年には1117万世帯に増加している。
今回の依頼者・信明さん(60歳)は、妻(45歳)の猛アプローチで結婚し10年になる。当初は妻が専業主婦になり夫婦円満だったが、5年前に役職定年になり収入が半減すると、夫婦仲が険悪に。妻の希望で建てた家のローン返済、9歳の娘の教育費もおぼつかなくなり、妻に復職してもらう。復職3年目、妻は突然離婚を切り出してきて……。
【それまでの経緯は前編で】
妻は「男ウケ」する典型的なタイプだった
妻は依頼者・信明さんがリモートワークになっているコロナの間は外泊をすることもありましたが、今は毎日帰宅しているとのことなので、朝から張り込みをスタート。
家は横浜の郊外にある、こだわりが伝わる無垢材を使った一戸建てでした。朝7時30分に信明さんが出勤し、妻と娘は8時10分に家を出てきました。
娘は学校へ、妻は駅へ。妻はとてもフェミニンな服装をしています。背中の半ばまである髪の毛は赤がかった茶色に染めており、ピンクのふんわりジャケットを着ている。
バッグもレースを多用したもので、ややふっくらした体型にとても似合っています。抜けるように色が白く、優しい雰囲気。典型的な「男ウケ」するタイプともいえます。
1時間以上電車に乗って、都心のオフィスに出勤……すると思いきや、オフィスがある駅を飛ばし、さらに2駅乗ります。
たどり着いたのは、大崎駅から徒歩10分程度のところにある、瀟洒なマンション。
妻はインターホンで開けてもらい、部屋に入っていきました。それから夕方まで全く動きがありません。
その間、マンションについて調べると、ここは人気のヴィンテージマンションで、すべての部屋が80㎡近くありゆったりとした作りになっている。家賃も高く、日本支社に勤務する外国人が住む物件のようです。
出入りする人も、大型犬を連れている海外国籍の人が多く、外国人専用の掃除会社のバンもとまっていました。高級スーパーのロゴが描かれたワゴンなども出入りしており、セレブな雰囲気の別世界です。
調査初日は、19時に出てきた妻がそのまま帰宅してしまい調査は終了。翌日も朝から尾行をします。この日はオフィスに出勤し、そのまま帰宅していました。
それにつけても、妻は「育ちがよさそう」な振る舞いをするので、とても目立っています。例えば、ドアを閉めるときに後ろの人を振り返ったり、スーパーやコンビニの店員さんに「ありがとう」と言ったり……。基本的に所作を両手で行い、周囲の人への慈愛に満ちているのです。
信明さんに「あなたは収入が低く、老人臭いから離婚したい」と言い捨てる妻の姿が想像できません。人間の二面性の奥深さを感じてしまいました。
【スーツが似合う外国人男性と……次のページに続きます】