親友・桂子さんは恋人の話をはぐらかした
礼子さんは顔立ちが整っており、大柄で筋肉質だ。物事の白黒をはっきりつけたがる性格でもあり、親からは「男勝りだから嫁のもらい手がない」と嘆かれたという。当時、このようなジェンダーバイアスをかけた発言が日常的に行われていた。
「私は親の予言通り、生涯独身です。彼がいたことも、結婚願望もあったのですが、会社は一生勤められるし、仕事は嫌いじゃないし、結婚する理由がなかったんです。それに、私は子供が大嫌い。甥っ子や姪っ子のことを可愛いと思ったことはありません。でも老後の面倒を見てもらえるかもしれないから、小遣いはあげていますけどね」
礼子さんは自分の人生を開拓していくタイプだ。性格もさっぱりしていてわだかまりがない。恋愛に必要な甘美な情緒のようなものは持ち合わせていない。
「親友の桂子は、気持ちが陰気に滞っているというか、重く沈んでいるように見えて、それなのに、奧に柔らかさがあるような感じがする人。お互いに性格が真逆だからうまくいったんでしょうね」
礼子さんは独身だが、桂子さんは30歳のときに一度結婚した。
「でも2年しか持たなかった。原因は相手のDV。独占欲が強い男で、私は結婚するとき反対しました。予想通りの結果になっちゃって……離婚のときもウチにかくまってあげたりして、結局、私が間に入って別れさせてあげたんですよ」
離婚後の桂子さんはもともとの美貌に磨きがかかり、多くの男性が言い寄ってきたが、礼子さんが追い払った。
「離婚した後の女性には、妻子持ちが“遊べる”と思って来るんですよ。そう教えていたのに、桂子は言い寄られるとデートに行ってしまう。挙句の果てに、私に隠れて妻がいる男性と20年以上も関係を続けていたんです。その人は15歳も年上で、彼が死ぬまで付き合っていたそうです。しかも彼は妻に内緒で桂子にマンションとまとまった金額を残したんです。妻にしてみればいたたまれないですよね」
男性と死別したとき、桂子さんは54歳になっていた。
「うんと年上の男と付き合っていたからか、彼が亡くなってからは若い男とばかり付き合うようになっていったんです」
【若い男に親友の老後資金が奪われていく……その2に続きます】
取材・文/沢木文
1976年東京都足立区生まれ。大学在学中よりファッション雑誌の編集に携わる。恋愛、結婚、出産などをテーマとした記事を担当。著書に『貧困女子のリアル』 『不倫女子のリアル』(ともに小学館新書)がある。連載に、 教育雑誌『みんなの教育技術』(小学館)、Webサイト『現代ビジネス』(講談社)、『Domani.jp』(小学館)などがある。『女性セブン』(小学館)、『週刊朝日』(朝日新聞出版)などに寄稿している。