将来のお金の不安と介護要員が嚙み合った
男性の年収制限があり、バツイチでもOKな婚活パーティに定期的に参加するように。そこでの出会いはもちろん、参加していた女性たちに声を掛けて別に飲み会なども行っていた。女性の紹介で知り合ったのが、現在の夫。年齢は紗枝さんよりも8歳上でバツイチ、養育費を払っている娘が1人いる。
「夫は自営業で大きな借金もなく、ギャンブル癖もなく、すでにマンションの一室を持っていました。結婚まで1年ほどお付き合いをしたのですが、温厚で性格も問題ありませんでした。前の離婚は元奥さんの有責ではあるものの、子育てをメインにしていたのは奥さんとのことで親権は相手になったようです。
私には何も問題はなかったのですが、彼には、世間一般的な夫婦には大きな問題になり得るものが1つありました。夫は男性機能が不全だったんです。元奥さんの浮気から行為ができなくなり、付き合って3、4か月目におかしいと思って話し合ったら、そうだと打ち明けられました。私自身もそこに重点を置いているわけではないし、年齢的にも子どもはいらないと思っていたのでそのままの夫を受け入れました」
結婚生活は順調だったが、生活の中で夫が再婚したかった理由に気づいてしまったという。しかし、紗枝さんに離婚意志はない。
「夫には高齢の母親がいて、たとえ不全でも介護要員として妻が欲しかったんだと気付きました。義父はすでに亡くなり、義母は近隣で一人暮らしをしていて、夫は頻繁に私を連れて様子を見に行きました。今のうちに仲良くしてほしいんだろうなって。義母も夫に似て温厚で優しい人なので、今のところ仲良くやっていけています。
義母はまだまだ元気ですし、介護が必要かさえわからないのに、この安定は捨てられません」
紗枝さんはこの再婚について、してよかったと笑顔で答える。
「もちろん好きで仕方ないからの結婚もあるでしょうが、どうしても結婚したいから、という目的先行の結婚があっても私はいいと思います。愛情だけでは続かず、お金が救ってくれる気持ちもあるって、一度目の結婚と離婚でちゃんと学びましたから(苦笑)」
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紗枝さんは自分が希望する生活レベルを維持するために、夫は高齢の母親を一緒に見守ってもらうために再婚を選んだ。
お互いバツがあり、年齢も重ねた後の結婚にさまざまな思惑がつきまとうのも仕方がないことだろう。
お互いの胸の内が見え隠れする中でも関係がうまくいっているのであれば、そんな夫婦のかたちがあってもいい。結婚は当人同士の問題だけではないとよく言われるが、一番その問題と直面するのは当人同士なのだから。
取材・文/ふじのあやこ
情報誌・スポーツ誌の出版社2社を経て、フリーのライター・編集者・ウェブデザイナーとなる。趣味はスポーツ観戦で、野球、アイスホッケー観戦などで全国を行脚している。